フィクション

ザ・ドロップ / デニス・ルヘイン

2015-05-13

九州へ旅行に行っており、台風とともに戻ってきた(笑)
昨夜は横浜も大雨だったが、今日は気持ちのいい晴天。そして暑い…
まだ5月なんだけど・・・

 

本書の主人公は、ボストンの裏町に生きるバーテンダーのボブ。
ボブは孤独だった。
望んでいるのは、ただ、ひとりでいたくないということだけ。だが、それが叶えられないのはわかっていた。
彼は敬虔なカソリックであり、毎週欠かさず教会に通っているが彼は聖体を受けとったことさえないのだ。

そんなボブは冬の冷え冷えとした夜に一匹の子犬を拾う。その犬は歩道わきのゴミ箱に捨てられていた。
死にかけていた子犬を胸に抱いたそのとき、近くのアパートに住むナディアが声をかけてくる。小柄で、あばたがあり、喉元には赤黒いミミズ腫れがあった。
彼女によると、犬は闘犬(ピットブル)で引き取り手は少ないだろうという。

飼うにやっかいだとされるピットブルだが、それでも子犬はボブにとってまぎれもなく天で配られる聖体だった。
そんな折り、店に強盗が押し入り売上金が奪われる。それは店を牛耳っているチェチェン人の金だった。チェチェン人は激怒し、ボブとマーヴに犯人を見つけ金を取り戻すよう脅す。

やがて、年間で最も多額の金が賭けられるスーパーボウル・サンデーが近づいてくるが・・・

物語が進行するに連れ、なぜにボブが頑に聖体を受け取らないのかが明らかにされる。それは大方の想像の通りだが、読んでいると、それがいけないことなのかさえ揺らいでくる。
こうした複雑な人物造型はルヘインならではだ。その奥行きと深さがもう違う。

訳者も指摘するように、コンパクトながらルヘインらしさというものを存分に味わえる作品に仕上がっていると思う。
ただ、文学的に過ぎるきらいがあるので、好みは割れるだろう。

訳者によれば、本書は元々短編だったものが映画化(トム・ハーディ主演)されることになり、その脚本を長篇に仕上げた作品なのだという。
残念ながら日本公開は未定らしい。

 

 

 

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    お早うございます。
    湯布院へ行かれていたんですね。
    昔、社員旅行で別府に行きましたが、バカミスにならって、「バカ温泉」というジャンルがあれば、ベスト3(いやworst3か)に入りますね。今でもあるんでしょうか「地獄湯めぐり」。呆れましたが、かといって苦笑も出ず、何も言えずに見て回りましたが。
    その点、湯布院は風情があって良いですね~。(行った事が無いのですが・・・残念)
    やはり、温泉地は山間の川のせせらぎがあって、その音がきこえ、湯けむりが立っているようなロケーションが良いですね。修善寺、草津、銀山温泉等々が私の温泉のイメージです。別府や芦原温泉は×です。平地に温泉ホテルが立ち並んでいるのは風情なしでつまらんと思います。
    さて、ルヘインですが、料理会の時も言ったように、やはり、ミステリーというより文学タッチですね。純文学とミステリーのハイブリッドかな。作者は特にこれはミステリーだ、文学だとは意識せず、表現したいように書いているとは思いますが。
    ルヘインが「横浜読書会向きではないことは確かですね笑」と言われていましたが、毎年のミステリーのベストテンで上位に入っていたり、評判が良いのは、どちらかというと文学タッチの作品が多いと思うのですが。横浜読書会向きはどういうものになるのでしょうか?
    あと、カトリック信者における「聖体」の意味が良く分からないので、いまいち理解が浅くというか分らない部分が有りました。だから、キリスト教や神学が出てくるような「薔薇の名前」やダン・ブラウンの小説なんかは苦手で勿論読んでいません。高校の時、世界史が未履修なので、色々歴史を勉強しなければいけないので、日暮れて道遠しの心境です。
    イシグロのイベントレポ楽しみにしております。
    それではまた。

  2. SECRET: 0
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    Jiroさん、こんばんは!
    湯布院は落ち着いていて大好きです。箱根同様にちょっとお宿は割高ではありますが…。
    泊まったのは、今回奮発したので(!)12部屋しかない静かなところでした。星野やさんのように、敷地内にバーもカフェも美術館などもあって充実。 何より中国人がいなかったのが良かった!彼らは箱根とかにもわんさか押し掛けてきてますからね〜。
    福岡からゆふいんの森という特急だったので、別府には寄らなかったのですが、別府はすごいことになってそうだな〜〜
    >修善寺、草津、銀山温泉等々が私の温泉のイメージです。
    あ、なんか殺人事件が起きそうなラインナップ!!!(笑)
    銀山温泉って渋いですね。私はあまり東北方面に行ったことないのですが、お湯がよさそう。
    >さて、ルヘインですが、料理会の時も言ったように、やはり、ミステリーというより文学タッチですね。純文学とミステリーのハイブリッドかな。
    ルヘインは読者に考えさせるでしょう?だからこそ好きです。
    善悪もモラルもその人によって異なるものだと思うから。
    彼の独特の陰やウェット感も好みだったりします。
    ただ、『ザ・ドロップ』は先に映像ありきで、ルヘインとしてはある種の「試み」だったのでしょうね。
    コングリン兄弟の作品に比べると、おっしゃるように確かに小粒ではあります。
    映画は日本未公開とのことですが、見てみたいな。wowowプレミアとかでやってくれないかな?
    また、横浜読書会向きというのは…
    う〜ん、各々趣味がバラバラなので難しいんですよね。
    ただ、傾向をみてると、文学的なものは概ね駄目で、エンタメが比較的好感触な感じかな?
    映画好きも多いので、映像化されていることももしかしてポイントなのかな?
    ただ、おっしゃるように、このミスの上位に入るようなものは、概して高評価ではないです。
    ルヘインの『夜に生きる』は勿論のこと、W・K・クルーガーなども想像以上にボロクソでした(笑)
    というか、だからこそ、クルーガーの「ありふれた祈り」は、年末の各ミステリランキングで確実に10位以内には入るのじゃないかと私は見ています(笑)
    ちなみに、私はクルーガーという作家自体も好きなのですけど「ありふれた祈り」、大好きでした!!!
    先日のコンベンションで、あの杉江松恋さんも絶賛されていてなんだか嬉しかったです。
    杉江さん、わかってる〜〜〜!
    とうことで、では、では、また!

  3. SECRET: 0
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    なんか家族の悲喜劇の連想される九州旅行であった様子。
    まぁ・・どこの家族もそんな感じなのではないでしょうか(無責任発言)。
    さて『ザ・ドロップ』・・これは(変種の)ノヴェライズの作品なのでしたか。
    その過程から、あまり出来に期待できそうにない感じもしますが、
    そうではない様子・・自分としては頁の少ない(薄い)ところなど好感です。
    本作も近く読みたいと思います(来月かな?)。
    『ミスター・ホームズ』は微妙な印象の作品でした(自分は好きな方)。
    終戦後日本が舞台の場面があって、よく描けているとも思うのですが、
    別に日本でなくてもいいような印象も持ちました・・ちと残念。
    その部分、カズオ・イシグロの筆致(初期作品の)など少し連想。
    人生の過酷を強いられてもそれに耐えるほかないという諦観。
    すべてのみ込まれてしまうという慄き・・孤老の侘しさ沁みてきましたなぁ。
    ふう・・。
    ようやく遅く『火星の人』読むところです・・いつもSpenthさんから遅れること数か月。
    こちらはようやく新訳版が揃った越前訳のクイーンの国名シリーズ読んでるトコなのでした・・これまたどれもビミョーな印象。
    ではまた!
    (持ち株はどれも決算で下方修正・・暗い日々か続いてます・・ふう)。

  4. SECRET: 0
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    naoさん、おはようございます!
    >どこの家族もそんな感じなのではないでしょうか(無責任発言)。
    これこそ、naoさんのおっしゃるように「人生の過酷を強いられてもそれに耐えるほかないという諦観」でしょうかね(笑)
    ただ、私はホームズは最終的にはもっと仏教的な悟りの境地に至ったのではなかったかという気がしました。
    >さて『ザ・ドロップ』・・これは(変種の)ノヴェライズの作品なのでしたか。
    その過程から、あまり出来に期待できそうにない感じもしますが、
    確かにルヘイン作品としては小粒ですね。
    好みはそれぞれかな。私は思うところが多々ありました。
    >別に日本でなくてもいいような印象も持ちました・・ちと残念。
    え?そうですか?
    私はあの戦後日本のなんともいえない敗北感と、それを受け入れ前を向いていくという強さは老境のホームズの物語にひったりだと思いました。
    それはそのまま、ホームズの心境に当てはまるのではないかなと。
    といっても、私は戦後まもない日本など知らないのですけれどもね(笑)
    >こちらはようやく新訳版が揃った越前訳のクイーンの国名シリーズ読んでるトコなのでした・
    おお!
    越前さん、この間までクイーン読書会で全国行脚をやっていたみたいです。
    横浜読書会にも『Xの悲劇』でいらっしゃたんですよ。

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