フィクション

ジャッカルの日 / フレデリック・フォーサイス

2016-03-22

ベルギーでテロが起き、今回は邦人も被害にあったという。
ちょうどこの連休に友人が渡仏したのだが、予算が許せば私も一緒に行こうと思っていたのだ。結局、航空券の手配ができず諦めたのだが、他人事はない思いで今朝のニュースを見た。
被害にあわれた方のご回復を心よりお祈り申し上げます。

さて、たまたまWowで97年リメイク版の「ジャッカル」をやっていたので観たのだが、これにはがっかりしてしまった。
おそらくブルース・ウィルスにリチャード・ギアという2大人気俳優を起用するということもあって、アメリカ人向けの脚本にしたのだろうが、中身はスッカスカ。
ブルース・ウィルスの七変化は面白いが、「ジャッカル」という名は使ってはいけない。

Wowもどうせならリメイク版ではなく、「ジャッカルの日」のほうをやってくれればいいのに…
frederick forsyth

フォーサイスの「ジャッカルの日」の何が一番いいかといえば、これがドキュメンタリー・スリラーだということなのだ。

本書は、60年代始めのフランスを舞台に、シャルル・ド・ゴール大統領暗殺を企てる武装組織「秘密軍事組織(OAS)」が雇ったプロの暗殺者「ジャッカル」と、大統領暗殺を阻止しようとするフランス司法警察のルベルの攻防を描いたスリラーだ。

これはフォーサイスがロイターの特派員時代「ドゴール番」だった頃に、実際に起こった”ドゴール暗殺未遂事件”を下敷きにした物語だという。

ドゴールほど、命を狙われたフランス大統領もない。「フランスの名誉と伝統」に誇りを持ち、第二次世界大戦ではレジスタンスとともに大戦を戦い抜いた彼は、戦後、アルジェリア植民地の本国への反抗を抑えうる人物として支持を集めた。

彼は、国民の直接選挙による巨大な権限を持った大統領制を提案し、成立させると、第5共和制の初代大統領に就任すると、フランス政局を安定させるとともに高度経済成長をとげ、国際的地位を大いに上昇させた。

反面、「わが道を行く」という姿勢を強固に貫いたため敵も多く、実に31件もの暗殺未遂事件に遭遇したという。

 

エンタメでありながら、同時に史実でもある。そして、どこまでが事実でどこまでがフィクションなのかはフォーサス自身にしかわからない。そこがいいのだ。読み手の想像をかきたてる。

ジャーナリストらしい緻密で丹念な筆致もいいし、追うものと追われるものの攻防もいい。ジャッカルとルベルが違いに敵同士でありながらも、プロとして違いを認めているというのも好き。
ハードな雰囲気も保ちつつも、牡鹿荘での男爵夫人との一件にみられるようなエンタメ性もあって、その投入量のバランスも好き。
最後の一文までが読ませる。

オールタイムベストでいったら、ベスト3に入るな。なぜにこんな秀作をこれまで忘れていたのだろうか。今読んでもいいというか、今読むとなおさら良さが実感できる。
そうえば、「騙し屋」にはじまるマクレディ・シリーズとかも好きだったなぁ。

 

 

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