豪雨の九州では、未だ安否確認の取れない方も大勢いらっしゃるとか。ご無事を願うとともに、被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
横浜は猛暑。そのなかボストン・テランの「その犬の歩むところ」読書会に参加してきた。
場所はいつものカラオケ屋だが、久々に雑談だらけなゆったりした読書会だ。
また、「神は銃弾」以来の熱心なテラン・ファンも多かったということで、、、
平均点は10点満点中、8点!
最高点は10点(3人)、最低点は4点。
一部を除き、全般的には高評価な結果になった。
※以下、ネタばれあります。。。
まず、良かった点から
高得点とはいえ、そこは横浜読書会なので、、、
マイナス要素も多く、、、手厳しいご意見も多数。
犬が好きじゃないから感動できないことについては、「以上終了」なので置いておいて・・・(苦笑)
好みが割れたのは、物語が「通常の語り方では語られない」その手法。
本書では、ギヴという犬の足跡を辿り、”神の視点”で語られていくのだが、主人公は犬といえども犬ではなく、登場人物も次々に登場しては去っていく。
今までのテランの作風は、一人の人物に焦点を当てじっくり描いていくものだったので、次々と焦点が変わってしまうのは物足りなかったという人も。
逆に、誰か一人に焦点が物語を通して当たっていなくても、別の語られ方というのもあるわけで、これはこれで良いのではないかという声もあった。曰く、「日々の暮らしこそが人生」というわけだ。
いうなれば、単焦点レンズが好きか広角レンズが好きかの差だろうか。ちなみに、料理は単焦点で上が広角。
私自身は、物語自体がディーンが書いたという体をとりつつも「神視点」で描かれていることから、神話的なイメージを持った。神話もまた神が書いたのではなく神のなしたことを人間が書いたもの。
好みの問題はあれど、著者は今回「個の苦しみ」ではなく、より大局的な「アメリカの苦しみ」を描こうとしていることからの広角レンズだったのではないか。
そして、意外に人気キャラだったのがジェム。
ジェムとイアンの二人は共にミュージシャンを目指し(しかし、窃盗などを繰り返して)夢を追っていたが、あることがきっかけでイアンを殺してしまう。神話的といえばここも神話的で、彼らの関係性はそのままカインとアベルだ。
犬がすれ違うことで登場人物が救われるのであれば、極悪人たるジェムこそ救ってあげて欲しかったという声は大きかった。
キリスト教などの一神教の神は結構厳しいのだけれども、、、
…悪人なおもて往生す、なのかな?
もう一つ、争点となったのは覆面作家ボストン・テランの人物像である。
ドアーズがでてくるところからして、60代くらいなのは間違いないし、おそらくアメリカ中南部在住。インテリ層に見下されがちな「進化論を認めない」地域だろう。
人種的にも黒人ではなく白人という感じだが、テランの信仰する神はキリスト教なのだろうか。
物語の最後に加えられている「神話」や、犬をこれほど神格化するのは、もしかしてネイティブ・アメリカンの信仰なのではないかという目からウロコなご意見もあった。
先住民の血を引いているか否かは別としても、オジブワの血を引くオコナー・シリーズを書いているウィリアム・K・クルーガーに少し雰囲気が似ているような気もした。
また、テランの性別については、私は女流作家のあの特有の臭いは感じなかったので、男性ではないかなぁ…と思うのですが、男性陣は一様に女性だと言い切っておりましたです、はい。
終始覆面を貫くのか、どこかの時点で明らかにするのかわからないが、今後の展開が待たれる。果たしてどっち?
最後に…作中にはハリケーン・カトリーナの惨禍が描かれていたが、日本ではちょうど九州豪雨の最中。
今回の豪雨被害に見舞われた地域はご高齢の方も多く、東京や大阪、また福岡などで、親御さんの身を案じている方も多いことだろう。この日も九州出身だという方もいらしていたし(幸いにも被害はなかった地域らしい)
一日も早く、安心して生活できる日常が取り戻せますように・・・
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