フィクション

無慈悲なフレンチ監禁サイコ・スリラー「無垢なる者たちの煉獄」

2020-06-12

Kindle Unlimitedで読めるフレンチ・サイコスリラー。
想像していたよりずっと無慈悲で容赦ない。

「もう勘弁!」というほど残酷で緊迫したシーンが長く続くし、読後感もよくないので、精神状態がよろしくない時はお控えくださいという感じ・・・

無垢なる者たちの煉獄

 

主人公は強盗のラファエル。14年の懲役を終えた直後にヴァンドーム広場の高級宝飾店を襲うほどの筋金入りだ。グランサンクの一つから3千万ユーロの宝石の強奪は成功するものの、警官隊と撃ち合いになり弟ウィリアムが重症を負ってしまう。
ラファエルたちは追っ手から逃れ、ウィリアムの手当てのためパリ郊外の村にとどまることにする。そこで獣医サンドラを脅し手当てをさせるが、出張から帰宅したサンドラの夫パトリックは、サイコパスのシリアルキラーだった・・・


著者はフレンチ心理サスペンスの女王と言われているらしい。本書は日本お初。

上記のあらすじから連想するよりも読み応えがある。特にラファエルとパトリックの心理戦。
著者の意図としてはテーマは悪人(強盗)と悪人(サイコパス)の対決らしいが、もう「悪」という意味では勝負にならない。
強盗とはいえラファエルは人間だ。良心もあるし弟思いだし、さらにいえば見た目もかっこいい。ただ、環境に恵まれなかったとは言えるが。

日本も次第に格差社会になりつつあるが、機会の平等も怪しくなりつつある。ましてやそもそも階級ありきのフランスでは、それが与えられてもずば抜けて優秀でかつ幸運でもない限り、底辺から這い上がるのは難しい。ラファエルがそれを覆す唯一の方法だと考えたのが、非合法の世界だったわけだ。

同じことはパトリックにも言えることで、彼だって生まれつきの怪物ではなかったのかもしれない。しかしこちらは理解の範疇を超えおりどうしようもない感じ(苦笑)
訳者の方はパトリックが怪物になった経緯に、心ならずも胸が痛んだと言っておられたが、私はその不幸を差し引いたとしても、どう振り絞ってもそういう感情は生まれなかった。

物語に登場するのは、パトリックに誘拐された少女たちを除けば、全員悪人。ただ、その悪にもグラデーションがあり、閾値を超えるともう人間ではなくなる。

ラストはリアリティを追求するのならば、これしかなかったという終わり方。

ちょっとした「ひっかけ」もあるので、残酷さと救いのなさに耐性のあるミステリ好きさんも楽しめるかも。

 

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