ノンフィクション

性転師〜『性転換ビジネス』に従事する日本人たち

2020-06-09

タイトルも表紙のおじさんもアヤシげ(失礼!)だが、いたって真面目な本。

タイトルの「性転師」とは著者が作った造語だ。タイに性転換手術をするため渡航する人のアテンドをする人々をさす。

性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち

「タイじゃなく日本で手術すればいいのに」と思われる方も多いだろうが、性転換に関しては実はタイの方が先進国。数をこなしているため技術は比較にならないという。
ちなみに今は性転換手術とは言わず、「性別適合手術」というらしい。
転換だとイメージ悪いのかな・・・?
手術を希望する人の多くは、海外渡航に不慣れなケースが多いそうだ。それ以外にも、医師や看護師の説明も通訳なしではわからないし、その説明には医学用語が多様される。そこで、生まれるべくして生まれたのがこのアテンド業。料金に応じて、空港の送迎や病院の手配、診察の立ち合い、手術後のお見舞い等々を請け負う。

キャッチコピーには「天使か悪魔か」とあるが、本書を読む限りにおいて「性転師」たちは悪魔ではない。
中には悪質な業者もいるが、性同一性障害に苦しみ本来の性に身体を合致させたいと望む人にとっては役に立っている。もちろんビジネスなので、しかるべき料金はかかる。
少し違うかもしれないが、あまり治安のよくない国に行く時は、パッケージツアーに参加した方が安心なのと同じかも。
ツアー会社同様、アテンド会社も大手老舗から比較的新しい会社まで、それぞれ個性があり、代表的なものを取材している。

こういうニッチな職業が成り立つこと自体驚きだったが、とかくタブー視されがちな「性転換」に焦点を当てているのも本書の魅力。

タイトルとは裏腹に?かなり真面目に性転換界隈のことを取材しており、なぜ日本よりタイの方が先進国なのかについても、過去に起きた事件も取り上げて踏み込んでいる。
知らなかったけど、色々と事件があったのね・・・

昔、能町みね子さんの「オカマだけどOLやってます」というブログ(現在は書籍として販売されている)を読んでいたので、性同一性障害や手術のことは知っているつもりだったけれど、やっぱり奥は深い。

あくまでアテンド会社の取材がメインなので、性同一性障害に苦しむ方たちの声というのは取り上げていないが、日本の医療の実情やら周囲の理解やら色々大変なのだろうなぁと考えさせられる。
それでも日本の医療も進歩はゆっくりとではあるが前進しつつあり、将来的には「性転師」も廃業を余儀なくされるだろうという。

ちょっと気になったのは、女性から男性への性別適合手術で性器形成をした人に、よりそれを「本物」に近づけるため、陰影やしわを刺青する彫り師の方のことだ。写真付きで紹介されていたのだが、確か刺青は医療行為に該当するとかで、医師免許がないとダメと言われてた気が。
アートメイクもちょっと前に見せしめ的逮捕とかあったせいで、表立ってやるお店もなくなったのよね・・・
タトゥーは医療行為ではないとして判決が覆った例があったから、オッケーなのかな?

 

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