フィクション

やっぱりおそロシア!軍事スリラー「レッド・メタル作戦発動」

2020-05-11

グレイマン・シリーズでお馴染みのマーク・グリーニーのガチな軍事スリラー。今回はH・リプリー・ローリングス4世との共著。
H・リプリー・ローリングス4世は元海兵隊中佐で、海兵隊大学指揮幕僚カレッジの副学長を務めた経歴もあるガチガチのその世界の住人。

本書の魅力は、マニアも満足の圧倒的ディテール

水上艦に潜水艦、AH-64アパッチに戦闘機、A-10CASなどなどの描写もさることながら、それら最新鋭の機甲の特性を活かした作戦や、どう動けば有利なのか不利なのか等々詳細に語られている。
詳しくない私はもう読み飛ばそうかな?と思うくらいw

マーク・グリーニーもアクションシーンには定評があるが、機甲戦の迫力は共著者にガチの軍人のH・リプリー・ローリングス4世のおかげかな。

 

レッド・メタル作戦発動 上 (ハヤカワ文庫 NV ク 21-13)
レッド・メタル作戦発動 下 (ハヤカワ文庫 NV ク 21-14)

[まとめ買い] レッド・メタル作戦発動

長引く経済制裁に原油価格の下落と経済低迷にあえぐロシア。
「貧すれば鈍する」というが、ジリ貧ロシアが起死回生の大博打に打って出るというのが、本書のストーリー。

北朝鮮も中国もアレだけど、ロシアもねぇ…

台湾総選挙で中国との緊張が高まり、アメリカの注意がアジアに向いている隙を突いて、ロシアは大胆な作戦に打って出る。
その名も「レッド・メタル作戦」

ハッキングによって太平洋地域の海軍に混乱を引き起こし、その機に乗じてまずヨーロッパに侵攻。
米軍とNATO軍の注意を欧州に引き付けておいて、ひそかにケニアのレアアース鉱山を奪回しようという作戦だ。そもそもその鉱山はロシアが開発したものの、西側諸国の圧力に屈し手放したものだった。
レアアースは、ジリ貧のロシア政府、経済、軍が生き延びるために不可欠だったのだ。

物語は、ロシア側と米軍、フランス軍、ポーランド民兵それぞれの視点から群像劇的に描かれる。

印象深かったのは、ポーランドの抵抗。
この国は過去ソ連に侵攻され蹂躙された歴史がある。フェイントのためにロシア軍はポーランドに侵攻するが、ポーランド側の軍備はみすぼらしく、ロシア軍とはとても勝負にならない。しかも戦うのは昨日までカフェでバリスタをしていた素人の民兵たち…
それでも「絶対に許さない、タダでは帰さない」という気概を持ち、何もかもを犠牲にして闘うのだ。

これだけの規模なので登場人物も多いが、彼ら彼女らそれぞれに、読者を引き込む濃密な物語がある。

中心をなすのは機甲戦の臨場感と迫力に違いないが、戦いの後それぞれにページが割かれているのもよかった。

「戦争は常軌を逸している」
ある海兵隊員のセリフだが、その通りで戦争は常軌を逸したことで始まり、終わりもまた同じだ。
数時間前まで「使命」として殺し合っていたのに、終わりはあっけない。しかし、戦争に勝っても、膨大な犠牲者がでたことには違いない。そして、犠牲者にはそれぞれ家族もおり、誰かがその不幸な知らせを家族に伝えなければならない。
後に残るのは悲しみと怒り。そこをきちんと描いているのも元軍人ならではかも。

本書で活躍するのは主に米軍の海兵隊なのだが、ところで海兵隊とは一体なんぞや?その見識も深めることができる。これには物語はもちろん、訳者の解説によるところが大きかった。

いずれにせよ、読み応えありあり!
しかも、こっちのカタがついたと思ったら今度はあっちと、続編もありそう。ぜひ期待したい。

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