フィクション

忘れられないという不幸「完全記憶探偵」

2020-05-19

浪費ストレスのない Kindle Unlimited
読書は趣味の中では比較的お金がかからないとはいえ、昨今の本はお高い。
電子書籍でも3000円とか4000円とかザラだし、読みたい本に限って高いのだ。
しかし高くても読みたいので、清水の舞台から飛び降りる覚悟でDLしている・・・( ´ Д ` ;)

それを考えるとKindle Unlimited有能すぎ。
スバラシイ!


完全記憶探偵【上下合本版】 (竹書房文庫)

後天的な事故で脳の働き方が変わって、完全記憶能力と共感覚を得た男の物語。

タイトルがダサかったので食指が動かなかったけど、読んでみたらさすがはニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。

主人公デッカーは元NFLの選手にして元刑事。
ルーキーとしてデビュー戦に出た際に、猛烈なタックルをくらい生死をさまよったが、そのせいで脳の働きに変化が起こり、超記憶症候群になった。以来、何もかもを覚えていて忘れることができない。

その後、刑事になり幸福な家庭を築くが、16ヶ月前に妻子と妻の兄の3人が自宅で何者かに斬殺された。
犯人の手がかりはなく、自暴自棄になったデッカーは一時はホームレスにまで身を落とす。
かつてはNFLの元選手で警官になってからも維持していた身体は、ブクブクに肥満し今や見る影もない。

なんとか生活を立て直し私立探偵として活動し始めた頃、デッカーの妻子を殺したと自白する男が突如として現れる。
時を同じくして、地元の高校で銃乱射事件が起こる。
その犯行に使用された銃は、デッカーの妻子殺害に使用されたものだった・・・

デッカーが特殊能力を持っていることと、それが同時に悲劇をもたらしていることが魅力。しかし決して忘れないということは、苦しみから永遠に逃れられないということでもある。
人間にとって、忘れることは恵みでもある。人は嫌なことを忘れ自分にとって都合のいいように記憶を改竄するのだという。それはいわば生存戦略の一つで、「生きやすく」しているのだ。

デッカーは超記憶症候群(ハイパーサイメシア)と共感覚を持っているが、前者は言わずもがな。後者はというと、数字に色を感じたり、音に色を感じたり、言葉に味を感じたりする能力らしい。
人によってその感じ方は様々で、デッカーの場合は数字と色だ。
捜査の主力は超記憶力だが、共感覚は第六感のようなものとして役立っている感じだろうか。

サクサクながらも、割と丁寧な捜査手法を読ませる手続き的ミステリ。
特殊能力は捜査に大いに役立つが、魔法でも万能でもない。自分が見たことはもちろん、誰かが言ったことは細部に渡るまで覚えているが、それが嘘なら見抜くことまではできない。そのため、捜査自体はかなり地道だ。

デッカーはまた、能力を得た代償に社交性を失い、他人の感情を押しはかること等ができなくなった。
共に捜査を行う人たちと不器用ながらも協力して解決に向かっていく、その過程こそが本書の面白さだと思う。

真相は最後あたりまで全然わからない。
というか、最後の最後になって「その動機はいかがなものなの?」という感じでもあったが。
しかし、よくわからないのが人間というもの。逆恨みというか、なぜそこまで恨みを持つのかといった理不尽なことは、世の中に多くある。

主人公が特殊能力の持ち主ということで興味を引くし、それだけでなく、産業空洞化で寂れたアメリカの実情や性差別といった様々な社会問題なども盛り込んでおり、読み応えがあった。

実は本作はシリーズものの第一弾で、この事件をきっかけに新たな展開アリ。次作もニューヨーク・タイムズ・ベストセラーで、Kindle Unlimitedで読める。

  

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA