シアトルにバン・ショウが帰ってきた!シリーズ第二弾「冬の炎」

シアトルの街を舞台にした「眠る狼」シリーズ第二弾。
ハードアクションものでありながら五月蝿くないので、この季節の読書にオススメ。

 

冬の炎 (ハヤカワ文庫NV)

眠る狼 (ハヤカワ文庫NV)

主人公は陸軍レンジャーのバン・ショウ。前作では祖父ドノのために休暇をとりシアトルに戻ってきたが、今回は思うところがあり除隊している。彼はシアトルに腰を落ち着けて新しい生活をはじめようとしていた。

そんなバンに、ドノのかつての仕事仲間のウィラードが姪を探してほしいという依頼をする。ウィラードの姪エラナは恋人のケンドリックと共に彼の山小屋に行ったっきり連絡がとれなくなったというのだ。エラナはバンの幼馴染で、ケンドリックはシアトル有数の富豪の息子だ。
バンが極寒の最中、オリンピック山脈にあるケンドリックの山小屋にたどり着くと、そこには二人の無残な遺体が。しかもケンドリックと思しき遺体は熊に食い荒らされていた。
状況を察するに、ケンドリックがエラナを拳銃で殺して自らも命を絶ったように見えたが、何かが腑に落ちない。
エラナたちの無残な死を目にしたことで、バンは再び悪夢をみるようになっていた。乗り越えたはずのPTSDだ。眠れない夜を過ごすなか、バンはエラナの死の真相を突き止めようと決心するのだが…


リー・チャイルドのジャック・リーチャーにやや感じは似ていると言われているが、なんというか感触はもっとしっとりとしている。
舞台がシアトルの街に据えられ、Rainy Cityの名の通り、霧雨や小雨のシーンが多いせいもあるが、バンの語りも静かなのだ。
物語自体はハイテンポで派手だし、彼自身も癖がないわけではない。たぶんヒロイックさと彼の持つ影の部分のバランスが絶妙なのだと思う。スムーズに染み入ってくる。

前作を踏襲して、過去と現在が交差しながら物語は進む。ところどころフェイクがはいりつつ予想外の結末(?)にたどり着くのもまあ似てるといえば似ている。


目新しいことは、今回はレンジャーでの部下パクがバンの仲間に加わったことくらいだろうか。私は本質的にはやはりバンは孤独で一人のような気がするが、パクの登場で一匹狼ではなくなったという見方もあるのかも。
このパクはPTSDを患っており、そのせいで除隊後各地を放浪していた。バン自身も戦場の悪夢に悩まされていたが、より深刻なPTSDを患うパクの登場で、戦地を離れた後も苦しみ続ける元兵士たちの様子を掘り下げて描くことに成功していると思う。

このバン・ショウのシリーズは米国ではすでに次作も刊行されており、高評価を得ているらしい。
パクも魅力的なキャラクターだが、私にとっての本書の一番はバンの隣人の老婦人アディの飼っている犬のスタンリー。ドノの仕事仲間ホリスと同様、本書の和ませキャラ。バンにピットブルとシロサイを掛け合わせたかのようなと言わしめ、パクにもすっかり懐いた彼がぜひ次作にも登場しますように。

 

 

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