今回の舞台はシリア!グレイマン・シリーズ「暗殺者の潜入」

毎回もうこのシリーズ買うのやめようかな、と思いつつも毎度買ってしまう。
だいたい話の筋はみえているので、息抜き読書にちょうどいいというのもあるが、今回は特にグレイマンことジェントリーがあのシリアに潜入するというので、ついつられてしまった。

 

暗殺者の潜入〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)
暗殺者の潜入〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)

今、話題のシリア…3年ぶりに戻ってきたジャーナリストの方はご無事で何より。
その行動言動には賛否あるが、今回の件で思ったのは「シリアってもしかして今は案外ぬるいのかな?」ということと、「もはや従来のメディアの時代ではないな」ということだった。

シリアでISISに拘束された後藤謙二さんが処刑された衝撃の動画はまだ記憶に新しい。危険レベル4の退避勧告は実際まだとかれていないし、当面ないだろう。
しかし、今回の安田さんの会見を見る限り随分と雰囲気が違う気がする。拘束されたのが、ISISと反政府系の人質ビジネス組織という違いはあるのかもしれないが。
いずれにしても、安田さんがかなりラッキーだったことには違いない。そこは強調しておかないといけなかったんじゃないのかな…

何しろ我らがヒーロー、グレイマンもシリア潜入には二の足を踏むくらいだ。このシリーズはなかなかリアルに世界情勢を描いているが、シリアに関しても例外ではない。
ちなみにグレイマンというのは本シリーズの主役で、元CAIで今はフリーの凄腕工作員だ。
曰く、悪名高いISISも含めてシリアでは25もの勢力が互いに殺し合っている状況だという。腕に覚えのあるグレイマンでも躊躇するというものだ。
いわんや一般人をや…

でも「お人好し」で「女に弱い」のがグレイマン
国際的なモデルで、シリア大統領の愛人であるビアンカの息子を厳重に監視されているシリアの隠れ家から救い出すのが今回の任務。
しかも、シリア大統領には権力を握っているシャキーラ夫人がおり、その夫人はビアンカとビアンカの息子を殺そうと躍起になっているという無茶ぶりだ。
混乱が混乱を呼ぶのはご想像の通り。主役が死なないのも予想通りだけど。

ちょっと待って!イスラム教って4人まで妻をめとれるんじゃないの?と不思議に思ったアナタ。シリアでは一夫一妻が慣例なのだそうだ。
政府系組織と反政府系、そこにロシア、アメリカがどう絡んでいるかについてもフィクションながらよく分かる内容になっている。

物語自体は水戸黄門なので、あれこれと考えながら読むと多少は有意義なのかな?

世界の今を知ることは大事なことだと私も思う。ただ、ジャーナリストの方々が安田さんを擁護する度に何か心地の悪さも感じてしまった。

昔、ニューヨーク・タイムズの記者がアフガニスタンで誘拐された。結局イギリス特殊部隊SASに救出されたが、その作戦の際、SASの兵士が一人犠牲になった。
その隊長は、ニューヨーク・タイムズ宛に「なぜそれほど重い代償を払う必要があるのか、なぜジャーナリズムがそれほど大切なのか」という手紙を書いたという。
当時ならばそれは英雄の美談になった。でも今は?日本はいうに及ばず、欧米ですらどうなのだろう?

「ホモ・デウス」的見方をすれば、隊長の「物語る自己」は、仲間をなくすという悲惨な体験に意味を与えるために、救出できたジャーナリストとジャーナリズムを神聖視したにすぎない。
そして、そのストーリーには今はもう共感をもたせる力はない。

話は大幅に逸れたが、今後しつこい敵になりそうな新キャラも登場。シリーズとしても一周してまた元の地点に戻った感じ。いっぱい出てるけど、どこから読んでも基本大丈夫。

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