ノンフィクション

変質する世界 ウィズコロナの経済と社会

2020-08-06

月刊誌「Voice」に寄稿された様々な分野の方々のコロナ論考及びインタビュー集。

 
変質する世界 ウィズコロナの経済と社会 (PHP新書)

購入のきっかけは、中華SF「三体」の著者である劉慈欣の名が連ねてあったから。
中国人として今回のコロナ禍をどう感じているのか?それに興味があったのだけど、ちょっと肩透かし。
まあ、彼のせいじゃないし、他人事でも仕方ないけど。
気になったのは「西洋諸国は中国を敵視しているのだから、中国人も彼らを敵視するのは当然だ」という物騒な考え。
こうした雰囲気は今の中国に蔓延しているそうで、門田隆将の「疫病2020」の中で中国人ビジネスマンも同様のことを言っていたな・・・

本書には「パラサイト・イヴ」の瀬名秀明氏のメッセージもあるのだが、両SF作家の違いも興味深かった。
今回の新型コロナウイルスは、極めてタチの悪い強敵。多くの科学者がおそらく根絶は困難だとみている。
これを題材に劉慈欣がSFを書くならば、人類が打ち勝つ楽観的な話にしたいと答えたのに対し、薬学博士でもある瀬名氏は、「人類とウイルスの闘い」的なものの見方自体に警鐘を鳴らす。

彼は「インデペンス・デイ」の元ネタとなったアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」を例に挙げ、どうやっても勝つ見込みのない敵を前にした時どうすべきかを示唆する。
ちなみに「幼年期の終わり」は、あまりにも桁違いの科学技術力を前に人類が成長を諦めてしまうという皮肉を描いたものだそうだ。(私も読んだけど、そこまで考えなかったわー!)

「人類VS新型コロナ」や「団結して闘う」という第三次世界大戦的思考は、勇敢で前向きだし、尊厳も保てることで一旦は奮起するものの、長期化は避けられないため、返って疲弊し、不安感も閉塞感も増していくというのだ。

瀬名氏は、パンデミックの対処法には、「戦争モデル」と」社会心理学モデル」があるという。「戦争モデル」はまさに戦時下と同じ。政府や行政がトップダウンで「こうしなさい!」と国民の行動をコントロールするやり方だ。
「社会心理学モデル」は、何もかもをマニュアル化せず、個人が考える余地を残し各々の自発的判断を委ねるというもの。

安易なのは「戦争モデル」。自分で考える必要がないからだ。何かあっても政府のせいにできる(結果は自分が負うことに変わりないけど)ただ、際限なく上に判断を迫ることは、最終的には全体主義に結びつく可能性もある。
今、求められるのは、この二つをうまく組み合わせてメリハリをつけて運用することだという。特に、一人一人が何がベストかをその都度自分で考える。「こういうときほど人間性が試される」という瀬名氏の言葉が響く。

新型コロナウイルスにはまだわからないことが多く、だからこそ不安になる。不安だから必要以上に政府を非難したり、感染者を差別したりしてしまう。

メディアはその不安を煽るだけ。二度目の全国的な緊急事態宣言を望んでいる人も多いが、経済崩壊によって多くの命が失われるのもまた事実だ。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸氏は、公衆衛生学的見地から、経済破綻による自殺者増加を懸念する。失業率が1%上がれば自殺者は数千人にのぼり、過去の例からそれは数年続くという。
大打撃を受けている観光や飲食業等を除けば、まだ今はそれほどでもない業種も明日は我が身。この間の緊急事態宣言ではGDPが3割マイナスになったとも試算されている。

何やら、ハーバード白熱教室のサンデル教授の「トロッコ問題」のよう・・・

ただ、宮沢氏によれば、感染者から出てくるウイルスが非感染者に達するまでに、100分の1になっていれば感染は防げるのだという。それは結局のところ「密を避け、マスク、手洗い、食事中喋らないこと」に尽きる。

それにしても、政府は少しはこうした事情を国民に説明をすればいいのになと思う。

他には、「戦争にチャンスを与えよ」のエドワード・ルトワック氏と「中小企業に手厚い日本の支援策は誤り」とするデービッド・アトキンソン氏も面白かった。
イノベーションの誕生に関して正反対の見地なの(苦笑)

 

 

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