ニュージーランド発のミステリー「死んだレモン」

車椅子生活を送ることになった主人公が心機一転、ニュージーランド南島の最南端の町に越し、そこで土俗的事件に巻き込まれるというストーリー。

 
死んだレモン (創元推理文庫)

ニュージーランドいいなぁ。コロナで今年はどこにも行けないけどまたいつか行きたいなぁ。

この本のユニークなところは凝った構成もだが、著者と主人公が同じ名前だということと、南島最南端の町リヴァトンの土俗的事件ということだろうか。
それから、ウェリントンで仕事もまずまず、美しい妻もいた主人公フィンがなぜか不幸な気分から抜け出せない状態にあったこと。
他人から見ると何が不満なの?という生活を送っていながら、満たされていなかった。それが原因で深酒をし、交通事故を起こし生涯車椅子というハンディを負うことになったのだ。

最近自殺した若手俳優さんも同じような感じだったのかな?綺麗な顔に高身長と、他人から見れば容姿にも演技の才能にも恵まれていたのに。
「世界はほしいモノにあふれている」のJUJUとのトークも好きだったなぁ・・・

フィンはリヴァトンでユニークで有能な女性カウンセラー、ベティにかかるが、彼女が面白いことを言っていた。
曰く「物事に理由があるなんて考えるな」
なぜ自分が不幸なのかという理由をどれだけ集めても、何も変わらないというのだ。
依存傾向があるのは、遺伝子のせい。他人を愛せないのは両親との関係のせい。落ち込むのは脳内化学物質のバランスが崩れているから。でも本質は変わらないのだから理由探しをしても仕方ない、というのだ。
環境は変えられない。自分で変えられるのはその向き合い方だけ。

ところで、タイトルの「死んだレモン dead lemons」は、人生の落伍者という意味なのだそうだ。lemon自体に出来損ない、欠陥品という意味があるが、それにdead がつくとさらに辛辣なイメージ・・・

仕事も家庭も身体の自由もなくしてしまったフィンは人生の落伍者と言っていい。
ただ、この土地で思いもよらぬ事件に巻き込まれるとともに、得難い人々と出会うことにもなる。
特にマオリの元ラガーマンで同じ身障者のタイの存在が大きい。

事件自体の顛末は割とありがちかも。
かなり土俗的で、それが醸す不気味な雰囲気も魅力的。

 

 

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