ここまでのコロナ禍振り返り「疫病 2020」

保守派の論客、門田隆将のコロナ禍振り返り本。
門田氏を私は全然別人のミステリー作家と違いしていたのだが、ツィッターでは保守派のジャーナリスとして著名な方らしい。

そういえば、光市母子殺害事件を題材にした「なぜ君は絶望と闘えたのか」の著者として有名だったな、と思い出した次第・・・

 
疫病2020

コロナ禍総括するにはまだまだ時期尚早で、数年数十年かかるのではないかと思うが、日本の危機管理能力のなさを反省し、今後の世界情勢を占う意味で非常に意義ある本。

一言でいえば、安倍政権のコロナ対応は後手後手だった。
経済界の中国依存が大きかったため、直ちに中国からの入国拒否に踏み切れなかったのはやはり大きい。
新型コロナ・ウィルスの恐ろしさが一般に浸透し、連日メディアの注目が横浜港のダイヤモンド・プリンセスだけに向かう裏で、日々中国人は日本に来日していたのだ。まあ、非難されて当然だろう。
辛辣な言い方をすれば、官邸では映画「ゴジラ」のパロディでも繰り広げられていたのではないかと思うほどだった。
中国からの渡航禁止の遅れ、補佐官の思い付きのアベノマスク、ドタバタの給付金、世論に急かされて出した緊急事態宣言・・・
著者が繰り返し指摘するように、非常時に安倍政権は無力すぎた。
そして野党は「桜ガー!」

ただ、ちょっと思ったのは、春節前に台湾のように中国からの渡航者を完全にシャットダウンできていたとしても、いずれ欧米経由で日本に入ってきたかもしれないということだ。
ダイプリ騒動のあった2月時点では、まだ旅行会社は欧州へのツアーを普通に実施していた。個人旅行客もしかり。帰国の際の入国審査も自己申告のみでさほど厳しくなかったはず。
たとえどれほど厳しくしても、このウイルスは潜伏期間が長く、物によってはウィルスは数日は生き続ける。
グローバル化がここまで進んだ現在では、完全な鎖国以外にはあまり意味がないような気もしなくもない・・・

しかし、「コロナとの戦いで日本はすべて間違ったことをしてきた」と欧米に批判される中、日本の死亡率は世界的にみると最低水準にとどまった。米国の雑誌はこれを「奇妙な成功」と名付けたほどだ。
そこには、日本の医療関係者の努力はもちろん、日本人の性質によるところが大きいと評価している。
すなわち、他人を思いやる文化、握手しない風土、衛生意識の高さだ。日本人が風邪でマスクをするのは、他者にうつさないためだ。
誰しもが双方向でマスクをすれば飛沫感染はかなりの部分防げるし、手洗いや消毒を徹底すれば、接触感染も防げる。
アメリカで連日起こっているBLMのデモなども、せめてマスクをすればいいのにと思ってしまう。

なお、日本は今回のような緊急事態に対応できる法制度が整っていない。だから欧米のように強制力を持つロックダウンもできなかった。
できたのは「法的強制力のないお願い」のみ。それなのに、ほとんどの日本人が真面目にそれに従った。
そういう日本人特有の気質が感染拡大防止に大きく寄与したのは確かだろう。

これらに加え、昨日のNHKスペシャルの山中教授によれば、アジア人の死亡率が低い理由=ファクターXの一因として、全般のヒト白血球抗原(HLA)の型の可能性が挙げられるという。
アジア人には、このHLAの型がコロナに感受性が高いため抗体を多く作り出すことができ、そのため重篤化しにくいという仮説があるのだそうだ。

武漢ウィルス研究所(本書では武漢毒病研究所との記載)とコロナウィルスの発生の関係性ついては大変説得力があった。
関係者の証言をつなぎ合わせると、大方の予想の通り、武漢ウィルス研究所で人工的に作成された物であることや、そこで使われた実験動物が正規のルートで処分されず市場に流れたというのは間違いなさそうだ。
問題は、すでに研究所自体爆破されてしまい、証拠もデータも一切合切なくなってしまったことだろう。
爆破という無駄な派手さはなんとも中国らしい。
中国という国がどういう国なのかがよくわかる顛末だ。

就中、白眉だったのは、今中国人が中国政府をどう思っているのか、ということについてだった。
驚くことに彼らは概ね習近平独裁体制に満足しているというのだ。
なぜなら、中国は独裁国家にしかできない強引なやり方ではあるがコロナ禍から早く立ち直った一方で、欧米の自由主義国家はまだ多くの死者を出し続け、経済的にも大ダメージを負っているからだ。

これは著者がインタビューした中国人の個人の見解であり、中国人民の総意ではないにしろ、中国が「焼け太り」そうな気配があるのもまた事実。
国力が増すことで自分たちに恩恵があるならば、実利的な中国人が習近平独裁を支持するのも納得できる。
いずれにせよ、コロナの渦の目が中国なのは間違いない。

急かされるように出された緊急事態宣言は解除となったが、首都圏では人出とともにまた感染者数が増えてきた。
ただ、もう相当なことにならないと一斉自粛はできない。
闘いは確実に長期に及ぶので、「命」と「経済」のどちらか一方だけではダメで、今後は双方のバランスを取りながら感染対策をすることが求められる。
踏ん張りどころだが、安倍政権は超長期政権ならではの膿みが噴出し、もう持ちそうにもない。
おそらく今後は短期政権の繰り返しが予想される。となれば、経済面においても、国際社会においても、存在感は小さくなるだろう。
悪い方向に転がらないといいけどなぁ・・・

 

 

 

 

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