フィクション

味方に切り捨てられる男、ホフマン再び!「三分間の空隙」

2020-09-30

あの「三秒間の死角」の続編。本年度の海外ミステリでは本書は必読!これを読まなければ始まらない。

 
三分間の空隙【くうげき】 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
三分間の空隙【くうげき】 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

物語は「三秒間の死角」と大体同じパターンw

潜入捜査官が、味方に切り捨てられる。
でも、苦境のなか知恵を絞り生き残る・・・

わかってはいても、でも、でも面白いのだ。

今回の舞台は主にコロンビア。ご存知コカインの大生産地。
主人公のエル・スエコ(スペイン語でスウェーデン人の意)こと、ピート・ホフマンは、コカイン売買を資金源とするゲリラ組織PRCの大物幹部、ジョニー・サンチェスの用心棒として潜入捜査中だった。
これまで、彼ほど深く組織内部に通じたものはいない。
雇い主はアメリカ麻薬取締局(FDA)だが、彼のことを知るのは長官のスー・マスターソンと、彼をFDA売り込んだ元の雇い主のストックホルム市警のウィルソンだけ。

そんなおり、アメリカの下院議長クラウズが、コロンビアでPRCに誘拐されてしまう。クラウズは娘を麻薬のせいで亡くし、猛烈に麻薬を憎んでいた。自身が独自に組織する精鋭部隊を率いPRCの拠点を急襲をかけるためやってきて、逆に囚われたのだ。

大物議員誘拐にホワイトハウスは動揺。
政府は味方であるホフマンをあえて切り捨てる。
アメリカ政府の殺害対象リストにあるホフマンの名は、そのままにされてしまったのだ。
アメリカという国がこの種のリストを大々的に発表する場合、すでに最初の標的を見定め、射程圏内に入れているということだ。
ホフマンにはもう時間がない・・・

もう北欧ものは出尽くした感さえあるが、今回の舞台はコロンビア、アメリカ、そしてスウェーデンとワールドワイド。
メキシコ麻薬戦争を描いたウィンズロウの小説を彷彿とさせるシーンも多くある。
ジャングルに囚われた下院議長の拷問シーンなどは、リアリティがありすぎて読むのが怖いほど。

それとともに、圧巻なのはホフマンの周到さだ。常に「プランB」がないと、こんな世界では到底生き延びることはできない。
なぜなら、常に裏切られる可能性があるから。彼は法にも正義にも守られないから。

そして「犯罪者を演じられるのは、犯罪者だけ」
その境界線上でホフマンは苦しむが、ラストの彼の行動は印象的だ。

訳者後書きによれば、まだ続編があるとかで、「三秒」、「三分」ときて、次は「三時間」なのだそう(笑)
しかし、ホフマン優秀すぎ。余裕でCIAにスカウトされそうだけど、次はそういう感じになるのかな?

そのまた次は「三日」?と思いきや、ベリエ ヘルストレムの死でそれはもうかなわない。ストックがあるのは次作までらしい。

これまでにも、アンデシュ ルースルンドとベリエ ヘルストレムのグレーンス警部シリーズは様々な趣向を凝らしてきた。「事件が起きて警察が解決する」というワンパターンな警察小説ではなかったが、ホフマンの登場でさらに枠が取り払われ、面白さの幅が広がった。
もっと読みたかったなぁ・・・

上下巻だけど、全くそのボリュームを感じさせない。スリリングでテンポよし。秋の夜長に是非!

 

 

 

 

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