フィクション

ナポリが舞台!イタリア版87分署シリーズ開幕「集結 P分署捜査班」

2020-06-24

本書の舞台はナポリ。
県境を超えた旅行も解禁になったけど、海外旅行に安心して行けるようになるのは数年先になるのかな?

「ナポリを見て死ね」というが、まだ当分見られそうにないわ。

集結 (P分署捜査班) (創元推理文庫)

さて本書の主人公はシチリア人のロヤコーノ警部。
彼は、ピッツォファルコーネ署への異動を命じられる。シチリア・マフィアに濡れ衣を着せられたことで、ここナポリに異動になり、連続殺人事件で名をあげたが逆に疎まれ、いわば追い出された形だ。

通称P署の管轄は、労働者階級にホワイトカラーの中産階級、実業家などのアッパーミドルから貴族までの階層が暮らす多彩な地区だ。
治安が悪いことで観光客にも知られるスペイン地区を含み、犯罪も多い。
少し前に署内でコカイン横領という不祥事があり、閉鎖されていたが、意欲ある若きキャリアのパルマ署長のもと、新しいメンバーで新しいスタートを切ることになった。しかしながら集められたのは、どの分署でも持て余していた「ろくでなし」刑事たち。
ちなみに、原題は「ピッツォファルコーネのろくでなしたち」である。

スピード狂のアラゴーナ、署内で銃を発砲したアレックス、自制心を失いがちな暴力刑事のロマーノ。そして厳密な調査の結果、シロとされたP署生え抜きの副署長のピザネッリと、後方支援のオッタヴィア。

そんなロヤコーノ警部が着任早々取り組むことになったのは、スノードーム蒐集が趣味の資産家の女性チェチューリアの殺害事件だったが・・・

事件そのものは割と平凡。金持ちの女性が殺害され、最も疑わしいのは逆玉に乗った彼女の夫。彼には愛人もいる・・・
だが、本書の面白味はそこだけではないのだ。刑事たちの子細な私生活、地道とも言える捜査プロセスにある。まさにマクベイン的。

それにしても刑事たちの私生活は、なぜあれほどまでに興味深いのか(苦笑)
キャラクターが個性的で魅力があるせいもあるが、彼らがどういう生活をしていて、どういうことに悩んでいるかというゴシップ的面白さは否定できない。
タブロイド紙が売れるのも、SNSが時に炎上するのも当然なのかも。皆内心、人のプライバシーに興味深々なのだから。
現代警察小説やドラマのスタンダードとなった87分署シリーズがあれほど愛されたのも、この辺りに理由があるのではないか。

社会問題の盛り込みがうまいこともマクベインの特徴。本書でもそれはしっかり踏襲されている。
日本も「格差社会」が叫ばれて久しいが、それでもまだ欧米に比べると格差はそこまで大きくはない。そこにいくと、イタリアは完全なる階級社会だ。
上から、ほんの数千人しかいないアッパー層、定職につきバカンス費用を捻出するため給料をやりくりするミドル、そしてその日暮らしで明日を生き延びるのに精一杯の大勢の人たち・・・
階層間の移動はごく稀で容易ではない。だから歪みも起こる。

反面で、殺されたチェチューリアの友人の男爵夫人の「私たちは、好きなものにありったけの愛情と時間を捧げることができる。お金は、そのためにあるのよ」との言葉通り、芸術や文化を支えるパトロンになっているとも言える。
まさに、文化芸術は余剰から生まれる。

ただ、男爵夫人も、金持ちの男に喜んで囲われる貧しい少女も等しく孤独だ。

スノードーム殺人の他にも、今後事件化しそうな出来事がいくつか起こっており、次作の期待も高まる。
あの囲われものの少女はどうなるのか、副署長が追っている不可解な自殺の件はどうなるのか。

イタリア的で、北欧ミステリのように暗くなりすぎないところも好きだし、舞台がナポリとあって、どこを切り取っても絵になる景色が目に浮かび、ちょっとしたバカンス気分も味わえるのもいい。
食いしん坊の私には、時折出てくる食べ物なども魅力。キノコのクリームソースのフェットチーネと仔牛のレモンソテーに、アリアリコワインの組み合わせも是非試してみたい。

イタリアではテレビドラマ化されてるそうだから、Netflixとかでやってくれないかな?

 

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