ノンフィクション

全ての解決策?「クリーンミート〜培養肉が世界を変える」

2020-09-16

「クリーンミート」とはなんぞや。

それは肉の細胞を培養して人口的に作られる培養肉のことだ。
培養肉と聞いて私がイメージしたのが、某カップ麺の”謎肉”。
“謎肉”の正体は大豆原料の加工食品らしいが、このクリーンミート(培養肉)は正真正銘、動物の肉。


クリーンミート 培養肉が世界を変える

人間の肉食に対する執着というものは凄まじいものがある。おそらく人間が肉食を諦めることはないだろう。だが、畜産業には大きな問題がいくつもある。

まず、増え続ける人口を養えないという食糧問題。
日本などの先進国は少子高齢化や人口減少に苦しんでいるが、世界人口は恐ろしい勢いで増え続けており、2050年には100億人に達すると予測されている。そして経済成長で豊かになりつつある人口爆発地の人々も、肉食が当たり前になりつつある。
家畜の飼育には大量の飼料や水、土地といった資源を要する。

次に地球環境に与える問題。畜産業は車や鉄道、飛行機といった輸送手段全てを合計したものより、温室ガス排出量が大きいという。

そして、飼育される家畜は極めて悲惨な状況下で飼育されているという動物虐待の問題。
有名なのはフォアグラだが、身動きがとれないほど狭い空間で一生を過ごすブロイラーも相当なものだという。

これら全ての解決策がクリーンミート。
しかもクリーンミートは、今私たちが食べている食肉とは比べものにならないほど文字通りクリーンだ。
屠殺の際に汚染リスクの高い大腸菌などのどんな病原菌や、成長を早めるためのホルモン剤や、飼料に多く含まれる農薬の害とも無縁だ。

いいことづくめのようだが、ちょっとなぁと思った点が二つ。

  1. マルサスの罠を抜け、食糧供給が間に合えば、またさらに人口が増えるのでは?そもそも地球というキャパに対して人口が多すぎるというのが一番の根本的問題なのではないか?
  2. 理論的にはどんな動物の肉でも培養できるわけで、そうすると新手のカニバリズムが出てきたりしないのだろうか?文字通り、食べちゃいたいくらいかわいいを実践できるわけだが、それは犯罪に当たるのか?

 

まあ・・・そうなればそうなったで、考えればいいのだろうけど。
このクリーンミートの技術は、惑星間移動宇宙船などの食料問題も解決できる。実際、NASAの実験をヒントに開発されたのだそうだ。

本書の序文は「サピエンス全史」「ホモデウス」のユヴァル・ノア・ハラリが書いているのだが、そういえば彼もヴィーガン。
動物虐待の観点からヴィーガンになった人たちには、クリーンミートはこれ以上ない解決策だ。彼らの多くは肉が嫌いなのではなく、渇望しているが意思の力でそれを封じているだけなのだから。
動物を殺さず、なんなら豚や鶏、牛や羊をペットとして可愛がりながら、彼らの肉を食べられる。

説明できないのだけれど、何か微妙な気分になるのはなぜなのだろう?

クリーンミートが食肉の主流になれば、今いる膨大な数の家畜は必要なくなる。残酷で惨めな一生を送るくらいなら最初から生まれてこない方が幸福だと著者はいうが、それは人間にも当てはまるような。それとも人間はまた別なのか・・・

クリーンミートの製造はまだかなりハイコストだが、かつてPCやiPhone、DNA解析が辿った道と同様に、いずれ庶民にも手が届くものになるだろう。
この技術は皮革や毛皮、牛乳も培養可能。本書でもその将来性が示されている。
また、今後は野菜も工場生産に切り替えられていく可能性が高いのかもしれないなぁとも思う。
温暖化が原因とされる近年の気候変動で、農作物の供給は不安定になっている。中国での蝗害も話題になったし、日本でもこの夏の前半は葉物野菜が高かった。
食糧の担い手は農民から化学者へと、完全に形態を変えてしまう可能性もある。

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