叩けば埃どころじゃない密漁の現実「サカナとヤクザ」

毎年話題になるマグロの初セリ。今年の金額はなんと3億超えだという。
競り落とした鮨会社の社長は「少々やりすぎた」と言っていたが、正月早々なんとも景気の良い話だ。

サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う

日本人は魚好きで知られるが、それでも先進国で漁獲量が右肩下がりで落ち込んでいるのは日本だけなのだという。かつての獲って獲って獲りまくる漁業の影響で日本の近海は痩せ、厳格な漁獲高のルールによって密漁がはびこるようになった。そして密漁の影にはヤクザの存在がある。
魚河岸は歴史的にもヤクザと密接な関係があるし、誰も余計な詮索をしないことから、はみ出し者の受け皿にもなってきた。
「現代社会ではまっとうな社会人のハードルが高い」という著者の言葉が重い。

密漁をなくせばいいという問題でもない。もしなくなれば、アワビはもちろんカニやイクラ、ウナギもその価格は今以上に高騰し、品物そのものすら集まらなくなるという。ただでさえこれら海産物は高価なものだが、無理をしても庶民が口にできる価格ではなくなるだろう。
ある意味で、日本の漁業は不正の上に成り立っているのだ。

ところで、「密漁」とは、漁業権を持たないものが漁を行うことや、定められた漁獲高以上の漁を行うことをそもそも漁業権というのは”日本にしかない独自のルール”だという。
「ルールを持ち込んだ時点で密漁は必然」なのだ。魚がいれば獲るのは漁師の性だし、農作物泥棒とは異なり非漁業者にしても罪悪感は薄いという。

密漁なんてしょぼい上がりだろうと思いきや、密漁は100億円の巨大ビジネスだ。
密漁団グループとそれを取り締まる海上保安庁の捕物劇はなかなか面白いが、ヤクザだけが悪者というわけでもない。ヤクザの下で働く漁師(もしくは漁師もどき)や、密漁品とわかっていても仕入れる業者も、それを欲する消費者さえも同様だと著者は指摘する。

鳥取県のズワイガニ漁は例年になく豊漁が続いたため、年明けを待たずして漁獲量の9割を超え困っているとニュースになっていた。
ルール通りなら、2月3月にはもう漁はできなくなり、地元のカニ料理自慢の旅館もカニ料理が供せなくなるおそれもある。
漁業権を持った漁師が定められた上限を超えた漁をするのは、通常見逃されるというが、たぶんこの場合もやり過ごされるのだろう。
通年、朝食にイクラかけ放題などという宿が存在するのも同様の理由からかも…

 

北海道根室の”赤い御朱印船”の章は特に興味深かった。
北方領土は日本の領土とされつつも、ロシア(当時はソ連)が実効支配している。日本の漁船の拿捕は多発したが、日本政府はダンマリだった。そんななか、スパイ業務と引き換えに、その報酬として北方領土海域での安全な操業を許可されたのが、「赤い御朱印船」だ。

安倍首相は2島返還を視野に働きかけをしているというが、よほどの対価を払わないかぎり難しいだろう。
敗戦の年北海道の人口は東京より多かったというのは、衝撃的な事実だった。漁業の一大拠点として根室も非常に栄えていたのだそうだ。
が、昨年車で北海道を巡った友人にいわせると、他の地方の例にもれず寂しい感じだったそうだ。
もしも2島返還されれば、少しはそれも変わるのだろうか。

 

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