ノンフィクション

移民 難民 ドイツ・ヨーロッパの現実2011-2019 世界一安全で親切な国日本がEUの轍を踏まないために

2019-12-19

先日の英国総選挙では保守党が圧勝。ようやくブレグジット(EU離脱)が確定した。

メルケル首相が、突如無制限の難民受け入れを表明してから、EU加盟国は、言い方は悪いがそのとばっちりを食ってきたと言える。

今日でいう難民とは、政治的迫害や武力紛争、迫害等のため国境を越えて他国に庇護を求める人々のことを言うが、彼らのほとんどは自国が安全になったのちも帰国せず、移民化することが多い。
そして、これまで移民政策が成功した国は、イスラエルを除き、ほぼ存在しない。それだけ文化宗教、歴史背景やその認識が異なる民族を受け入れると言うことは難しいということだろう。


移民 難民 ドイツ・ヨーロッパの現実2011-2019 世界一安全で親切な国日本がEUの轍を踏まないために

「西洋の自死」でも描かれていたが、英国民の大方の本音は「移民も難民ももうこれ以上勘弁」で、それが選挙結果につながったのは間違いないと思う。

英国同様に島国であり、ほぼ単一民族で構成されている日本が移民政策に舵をとったのは周知の通りだ。
少子高齢化による労働力不足を補うには、外国人労働者に頼らざるを得ず、目下のところそれ以外選択肢はない。
著者はドイツの失敗を踏まえた上で、受け入れには重々用心すべきだと提言する。
難民の実態、受け入れ事情、受け入れがもたらした負の側面については、「西洋の自死」と内容がかぶる部分も多い。

最も興味深かったのは、”メルケルは、なぜ2015年に突如として難民に国境を開いたのか”についてだった。
「西洋の自死」を含め、大方の見方はドイツが理性を失ったと言うものだった。自分たちは人道的な国民で、人助けをするという陶酔に酔ってしまったのだ。異様ともいえる盛り上がりには、根底に過去のセンシティブな問題があった。




西洋の自死: 移民・アイデンティティ・イスラム

実際、2015年に無制限の受け入れが決定し国境を超えてドイツに難民が押し寄せた際には、「ようこそ、難民!」という横断幕でむかえられたという。
だが、熱狂するドイツを近隣諸国、特にソ連のくびきに苦しんだポーランド、ハンガリーは半ば呆れて醒めた目で見ていたという。人権は大事だが、それは自国の平和と繁栄があってこその話だと骨身に染みているからだ。
5歳の幼い男の子の死によってシリア難民に対するドイツ国民の同情はうねりのようになった。その熱に動かされたことで、さしもの鋼鉄の女メルケルも国境を開放したとばかり思っていたが、著者の見方は違う。

すなわち、メルケルはそんなタマではない(苦笑)

彼女が難民に国境を開いたのは、ドイツ経済に配慮した怜悧な計算があったからだという。
メルケルにとっては安い労働力の確保をしつつ、ドイツ国民の贖罪の願望を満たしてやる一挙両得のチャンスでもあった。しかも自身は戦後ドイツ史において「人道の首相」として名を残すこともできる。
しかしそうは問屋が下さなかったのは周知の通り。ドイツ経済が好調のうちは難民はありがたい労働力だったが、経済に陰りが出てくると、これまでは目をつぶってきた異宗教、異文化に対する反発も自ずと強まる。

EUで一人勝ちと言われてきたドイツだが、実は爆弾を抱えている。2015年あたりから繰り返し囁かれてきたドイツ銀行破綻の噂がそれだ。
ドイツ最大の民間銀行であるドイツ銀行はディーリング部門の巨額負債を抱え実質ゾンビ状態。しかもドイツ銀行はEU統合においても重要な役割を果たしている・・・

英国が是が非でも逃げ出そうとしたのは、難民の割当問題だけでなく、こうしたリスク最小化の意味合いも多分にあったのかも?

国境開放の理由がどうであれ、メルケルのあの決断によってドイツ国内のみならずEU全体が混乱に陥った。

ドイツ人のセンシティブな贖罪への要求は、ホロコーストに根ざしているが、実は難民受入によって、ドイツ国内のユダヤ人はまたもや受難にあっているという。というのもイスラム系難民はユダヤ人を憎むよう教え込まれているからだ。

なんとも皮肉な話だが、日本こそ対岸の火事ではないと著者は指摘する。それどころか、さらに悪い状況も予想される。
もしも北が崩壊した場合、日本に押し寄せてくるのは反日教育を叩き込まれた難民たちだからだ。

恐ろしいと思ったのは難民問題に対するドイツ国内のメディアの報じ方だった。
人権、多様性、寛容・・・これらは言うまでもなく素晴らしいことだ。ただしそれなりの犠牲も伴うのも事実だ。
”弱者である移民難民の受け入れは、善である”と言う筋書きを通そうとするあまり、治安悪化やテロの報道は無視されるか最小限にtとどめられ、難民受け入れに慎重な姿勢をとる右派政党やそれを支持する人々は、メディアに民主主義の敵として徹頭徹尾糺弾されるという。

過激な極右政党として紹介されるドイツのAfd(ドイツのための選択)やフランスのルペン氏率いる国民連合は、もはや「悪」として報じられるのが定番になっている。でも本当に「悪」なのだろうか?
こうしたメディアによるバイアスはつくづく恐ろしいと思う。

アメリカのトランプ大統領は自分を叩くメディアに対し、フェイクニュースをばら撒いていると口にするが、あながち間違いでもないのかもとさえ思ってしまう。

さらに恐ろしいのは、メルケルの難民無制限受け入れの意図が「ひたすらグローバルな世界」にあったのではないかという著者の考察だった。国境は消え、国はもはや存在せず、あらゆる民族が混在した世界・・・

遅かれ早かれ、いずれ世界はそうなると言う人もいるが、それは本当に良いことなのだろうか。

ミシェル・ウエルベックの「服従」で描かれる世界より怖いと思うのは私だけ?


服従 (河出文庫 ウ 6-3)



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