最も旬なジャーナリストが示す暗澹たる未来「世界を変えた14の密約」

本書は英国のガーディアン誌やBBCで活躍している今旬なジャーナリストによる”予言の書”だ。

世界を変えた14の密約

まずKindleでサンプルをDLして読み始めたのだが、やめられなくなった。
1章で著者が明かしているのは、「現金の消滅」だ。
人は現金を支払う時、脳に不快な信号が走るようにできている。お金を手放す瞬間、人は喪失感を味わうのだ。だが、カード決済の場合にはそれがないという。
私が常日頃感じていたのもそれだ。現金で買い物をするスーパーでは値段を細かく見るくせに、カードで買うデパートでは多少のオーバー分は気にしない。
私に限らず、お金に対する人の振る舞いは不合理なものだ。
現金だけが手持ちの範囲内でやりくりするよう私たちを引き留めてくれる。
だが、取引が早すぎて脳が追いつかなければ、人は買い物に躊躇しなくなる。
かくして、書籍はいうに及ばず日用品の何もかもをアマゾンに頼る生活で、当然以前よりもかなり消費額も増えている。

スウェーデンはあと5年で現金をなくす方向だというが、日本は地震大国だし有事の際は現金が一番ということも目の当たりにしたばかりだ。浪費を戒める意味でも現金主義でいくべきだわね(アマゾン以外…)

しかし、時々思うのだ。今のような生活はいつまでできるのだろう?
というのも、海外に行くといつもその物価の高さに驚いてしまうから。アメリカしかり、ヨーロッパしかり、ニュージーランドしかり。今の日本は物価が安いので、それなりに暮らしていけるが、この先も同じ水準とは限らない。いや上昇はさけられない。

グローバル化によって急速に発展した国もあれば、日本のように置き去りにされた国もある。この30年で中国が急速に豊かになった一方で、相対的にみると日本は貧しくなった。
しかし、どの国でも格差はぱっくりと割れているという。「わたしたちは平等に不平等になりつつある」と著者はいう。格差は歴史上最大といっていいほど大きい。何しろ地球上の富の半分以上をたった8人の富豪が所有しているのだから。
大昔も状況は同じだった。だが、昔は王様は王様、百姓は百姓という諦めがあった。今はみんながもっと多くを欲しがるし、機会の平等は約束されてるはずだし、そうあるべきだと思っている。だから格差は大問題だ。

世界は砂時計になり、中間層はくびれて下に落ちる運命にある。


空恐ろしい話だが、20世紀の経済格差は、21世紀では生物格差になるという。
あまつさえ経済格差は寿命格差だ。少し前にニュースで報じていたが、横浜市青葉区の男性の寿命は大阪市西成区の男性のそれより10歳も長い。(青葉区は比較的所得が高い)

それが今や金持ちには「生物的アップグレード」の機会が開かれようとしている。CRISPR (クリスパー)・キャス9という遺伝子編集技術が確立されたことで、その可能性は爆発的に高まった。
一握りの金持ちは、この技術で遺伝的に優位な種(人類2.0)になれる。遺伝病はいうに及ばず、高い頬骨や長い手足、瞳や髪の色も思いのまま。強く、美しく、太ったりもせず、パーティでは光を放つことさえできるかもしれない。当然その形質は子孫にも引き継がれる。一方、貧乏人は以前と変わらず、昔ながらの病気になり、相変わらず太りやすく、年をとると弱くなる。まるで「銀河鉄道999」の世界のようだが、「人類2.0」は錆びない。

テクノロジーの進化は、働き方も大きい変化をもたらす。現在の中間層の仕事のほとんどはAIやロボットにとって代わられる可能性が高い。
だが問題は、ロボットよりも安い賃金で働く人間が仕事を奪い合う世界になるということだと著者はいう。「ロボットスワップによる超低所得の完全雇用」だ。すでにこれは、自動洗車機で起きている現象だという。70年代に登場した自動洗車機は、リーマンショク以降姿を消し、スポンジをもった低賃金の人間に置き換わった。彼らのほうが機械を使うより安くすむからだ。
AIがこの先さらに進化し管理職の業務や経営判断まで行えるようになれば、人間は監視するほうではなく、される側になる。

こんな暗黒の未来ばかり提示されると暗澹たる気分になる。そんなディストピアがやはり来てしまうのか、それとも世紀のガラガラポンが起こるのか、はたまた奇跡が起こるのか。
今更ビル・ゲイツになれるわけでもないし、なるようにしかならない。

長くなるので触れなかったが、本書ではダイエットについても非常に有意義な情報が得られる。
「一度太るとなぜ痩せにくい? 食欲と肥満の科学 」より役に立つかもしれない。
そして、ダイエット業界がどれほど「美味しい」のかもよく分かるだろう。

 

 

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