車のスマホ化で「自動車会社が消える日」も本当に来てしまうかも?

IoT、モノのインターネット化もすすんでいるが、車のスマホ化も着々と進んでいるそうだ。
ただ、少し前に、東京オリンピックの頃には無人タクシーが走っているかもとも聞いたが、残念ながらそこまでは進んでないみたい。
しかし、その時は確実にやってくる。
なんたって、今日日、フロアランプだってOSを搭載する時代なのだ。ランプに話しかけるのはかなりわびしいけれど。

自動車業界にも100年に一度の大きな転換期がやってくる。というか、もうやってきている。今後はますます電気自動車(EV)が主流になるだろうし、何より車自体がスマホ化する。
より大きな変化は後者だ。車は人が運転するものからPCやスマホを操るように行きたい場所を入力するだけのものに変わるだろう。近未来の車には、ハンドルもアクセルもブレーキもないかもしれない。

自動車業界の構図も変わらざるを得ない。大事になってくるのは、車を大量生産するハード面の技術ではなくソフト面だ。
自動車の開発、製造はもちろんのこと、販売も変わらざるを得ない。ウーバーに代表されるように、配車アプリが充実し普及すれば、個人が車を所有する必要はなくなるのだから。

これまで業界の中心に位置し、車に関する税制や排ガス規制などを決めてきたのは、莫大な雇用と資金力を背景にしたトヨタに代表される大手自動車メーカーだ。
だが、未来の車で重要なのは、日本の自動車メーカーが誇る製造技術ではない。グーグルのようなIT業界が持つ技術にとってかわられるだろうと著者はいう。
しかも、日本の自動車業界はこの流れに乗り遅れているらしい。

業界の巨人トヨタは?日産は?ホンダは?マツダは?
果たして生き残っていけるのだろうか。

これについては、それぞれの会社の現状と社風を比べつつ、各々どう立ち向かおうとしているかが考察されている。

印象深かったのはフォルクス・ワーゲンのしたたかさだった。
トヨタと世界で首位争いをしてきたVWは、あのディーゼルディーゼル不正問題で売上が激減した。だが、転んでもタダでは起きない。それを機にこれまでの自社の常識を覆すような改革に乗り出しているという。
今、社内では「自分たち自身が車を造る必要があるのか」ということが議論されているというのだ。そのクラフトマンシップを高く評価されてきたVW が、それをやめてしまうかもしれない。それは不正問題でエンジン部門の発言力が弱まったことを逆手に、EV化を進めている結果だという。量産化は先進国に籍を置くリーディングカンパニーの仕事ではないというわけだ。
VWはすでに未来を見据え、車というハードを造って利益を出すことでなく、移動手段のプラットフォームを築こうとさえしているという。

著者も言及していたが、このVWの図太さに比べ、東芝のなんとなさけないことだろう。不正の構図は両者そっくりだというのに、結果が違いすぎる。

今後、車の役割は確かに変わるだろう。
ただ、車を走らせることに喜びが存在するのもまた事実だ。
内燃機関しか残されていなかったマツダは、そこに活路を見出して「スカイアクティブ・エンジン」を生み出したという。
マツダのCMのキャッチになっている「Zoom-Zoom」はびゅんびゅんと風を切って走っていく楽しさ、ワクワク感を表しているという。そのキャッチの語感そのままに、マツダは他者と一線を画したブランディングに成功した。
VWとはまったく異なるアプローチによって、マツダは生き残ろうとしている。

本書はこのマツダの再生(かつてジリ貧時代があった)で締めくくられている。長期的ビジョンを持ち、信念を曲げず、自らの強みを伸ばすことで成功したマツダの例は特に日本人好みだろう。
明るいニュースが多くないなか、これで読後感がぐっとよくなっている。

株を買うときは近視的数値をみるばかりでなく、こういう面も重視すべきなのだろうなぁ。買うお金はどこにもないんだけど(苦笑)

 

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