国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 / 伊藤祐靖

ナダル、ダブルスで決勝進出(嬉)!!!

さすがにミックスダブルスは棄権したみたいだけど、そもそも無茶しすぎ。
シングルスは、もし順当にいけても今のナダルではデルポに勝つのは無理かもれしれない。錦織君はマレーに分が悪い、となると、3位決定戦でナダルと錦織君が当たるのだが、ごめんなさい。もしもそうなったらナダルを応援する。
だって、ナダラーなんだもん!
 
そういうと、皆から怒られるが、私にだって多少の愛国心はある。他の競技はもちろん日本を応援しているのだ。
 
しかし、「国のために死ねるか」と本書のタイトルのようなことを言われたら、無理です。死ねない。
 
時代錯誤漂う強烈なタイトルに惹かれてDLしてみたら、これが驚愕の内容だった。
著者の伊藤祐靖氏は、私よりは上ではあるが概ね同世代と言ってよい1964年生まれの元自衛隊の特殊部隊の創始者だ。同じ時代に青春を過ごしたとは思えない内容に、ただただ驚かされた。
 
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そもそも、自衛隊に特殊部隊があること自体私は知らなかった。特殊部隊といえば、アメリカ海軍のネイビーシールズや、陸軍のグリーンベレー、英国特殊部隊SASなどが有名だ。映画やドラマの中の彼らはまさに無敵の存在だが、それに相当するものが自衛隊の中にあるなんて。
 
しかし、その映画で活躍するアメリカの特殊部隊の実態は、著者曰く、「だらしない兄ちゃんたちの集まり」にすぎないという。
米軍特殊部隊の技量は異様に低いのだが、そこに米軍の強さの秘密があるともいう。
米軍は、各自個人の負担を最小にし簡単な業務のみを与え、それを確実にこなすことで組織として動かすことで強大な力を生み出しているのだ。
 
一方の日本は、そもそも日本の自衛隊は軍隊でもなく、自衛官は命を失う覚悟もないが、日本人にはそれを覆すだけの特異な点があるのだという。
それは、トップレベルの人間は少ないが、ボトムのレベルが高いことだ。
要するに、箸にも棒にもひっかからない人間が極端に少ないのだという。著者曰く、詰まるところ戦争とは、その国の底辺と底辺の勝負なのだから、日本は優位なのだそうだ。
目からウロコのような説明だったが、戦後の復興を思えば納得もできる。
 
ところで、この日本の特殊部隊構想の発端は、99年に起きた能登半島沖不審船事件にあったらしい。
著者は当時の護衛艦「みょうこう」の航海長だったのだ。そのとき、北朝鮮の工作船と思しき船の立ち入り検査を命じられたが、それはすなわち死を意味した。
銃撃戦になれば犠牲者がでる。海上自衛官は射撃訓練こそ受けているものの、防弾チョッキすらなく、おまけに工作船には必ず自爆装置が装備されていた。
立ち入り検査しろという命令は、すなわち海上自衛官に「国のために死ね」ということに等しかったという。
 
著者は、彼ら自衛官にそれを強いるのは酷だし、それができる特殊な人間というのはいる、と強く思ったのだという。
 
以降どのような決意で特殊部隊を作り上げたのかは一読に値する。
スパイなど特殊任務に就く人が、肉体や能力はもちろんその精神の強さが私たちとは全く異なるように、特殊部隊の人間も全く異なる人種なのだ。
 
これは、以前読んだ「サイコパス 秘められた能力」を思い出させた。普段、悪の権化で恐ろしいものとしてのみ扱われがちなサイコパスだが、実はそうでなく、「恐怖心のなさ」が必要とされる仕事だってあるのだという内容だった。
 
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後半、自衛隊を辞め、フィリピンのミンダナオ島で知り合った海南民族の弟子(というか師匠)とのエピソードには驚愕する。
真実は小説よりもとよくいうが、まさしく下手な小説よりも読み応えがある。
 
著者自身がこのような道を歩むことになったのは、父親の影響によるものが大きいという。著者親子共通のその思想と、我が身との差には唖然としてしまうほどだ。
何しろ、彼の父は陸軍中野学校時代の時に蒋介石暗殺を命じられ、75年に彼が台湾で死ぬまでの30年間、射撃訓練を欠かさなかったのだというのだ。
戦争は終わったが、命令は取り消されなかったからだという。
いや、いや、いや・・・。
 
私の亡き祖父も戦争へいき、当時小学生の私にその当時のことを話してくれることもあったが、祖父は今の時代の大多数の人々同様、非常に冷静に日本の立ち位置を見ていた。だからか余計にそのギャップに驚いてしまった。
 
著者の父も著者自身も、ある意味生まれながらの職業軍人である。一般人の私個人とは思想も価値観も全く異なるため、全面的に賛成とはいかない。
ただ、例えば先の能登半島沖不審船事件のような有事の際、犠牲になるのはこういう人々なのだ。
いや、彼らのような人は特殊ケースであって、自衛隊を軍隊ではなく、公務員的位置付けとして入隊したのだという人もいるだろう。彼らにも家族はいる。仕事なんだから死んで当然などとは言えないし、言ってはいけない。
 
それには、ただやみくもに戦争反対を叫ぶのではなく、「戦争を回避するためにはどうすればよいのか、そして、万が一、戦争に巻き込まれたら日本はどうすべきなのか」を国民が真面目に考えなくてはならないと思う。
 

 

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