China 2049 〜秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」/ マイケル・ピルズベリー

持っているコートのなかで最も高価なものに小さな虫食いが見つかる。修理費用は3万円!全くトホホな限り・・・
私もトホホだが、アメリカさんもかなりトホホな感じだ。何がトホホかというと、中国に対するこれまでの我が身の振る舞いに対してである。

本書の著者のマイケル・ピルズベリー氏は、米国政府の対中国政策に長年深く関わってきた中国通だという。
御年、71歳。自身でも「ニクソン政権以来、30年にわたって政府機関で働いてきた中国の専門家として誰よりも中国の軍部や諜報機関に通じていると断言できる」とまで言い切っているほどの人物だ。

本書執筆の目的は、かつて「親中派」だった彼自身の見解は全て誤りであったことを認めたうえで、アメリカをはじめとする世界中に、中国という国の脅威に対して注意喚起を促すことだという。

原題は「The Hundred Year Marathon」、100年マラソンである。
1949年に共産党が権力を掌握して以来、始まったとみられる周到な中国の超長期戦略のことを指す。すなわち、アメリカにとって変わって世界を掌握せんとしている。

中国はその戦略を周到に隠してきたと著者はいう。それは、自らの戦略を敵(アメリカ)に悟られることなく、時に敵の助言者をも利用するという中国古来の孫子の兵法や戦国作に基づく。それらから導かれる「勢」という思想のうえに立っているのだ。

「勢」とは、「敵が従わずにいられない状況を形成して敵を動かし、これに打ち勝つ神秘的な力」であり、「他国と連合して敵を包囲すると同時に、敵の連合を弱めて包囲されないようにすることを含む」

この「勢」を説明するのに、著者は、南の小国を指揮したあの諸葛孔明が北の大国を率いた曹操に勝利した「赤壁の戦い」を例にあげる。戦いの詳細は「三国志演義」に詳しい。映画レッドクリフの題材にもなっている。

「勢」は、映画レッドクリフでまさに金城武扮する諸葛孔明が、東の風が吹き始めるやいなや、扇を指し示し襲撃を開始したシーンに象徴される。
賢人が「勢」の到来を察知した瞬間だ。

私のような単純な者からすれば、「赤壁の戦い」は、諸葛孔明という人の英知に焦点の当てられる戦いでしかないが、ピルズベリーの見方は違う。
それは、敵を欺いたり、敵の判断の誤りを利用したりする戦略から、そうした戦略を賞賛する中国流の正義といった中国独自の考え方を見ることのできる教科書なのだという。

red criff
また、思惑を隠して近づいた中国に、そうと知らぬアメリカは気前よく様々なものを提供してきた。機密情報や技術、軍事ノウハウ、情報機関や専門家による助言などなど。
そして、プレゼントしてもらえないものについては、盗み取るのだ。

アメリカにしてみれば、友人だと思っていたのに、実は二心ある盗人だったというわけである。中国のモラルとルールはアメリカや西側諸国のそれはまるで違う。目的の達成のためにはルールの順守など問題ではないのだ。

後半は、中国が今現在世界にもたらしている危機について語られる。中国国内における言論統制、検閲、弾圧はいまさらいうまでもないだろう。だが、驚くべきことに、中国語には「権利 right」に相当する言葉が存在しないというのだ。

中国が今のアメリカの地位にとって変わった場合、それは世界の問題になりかねないと著者は指摘する。
アメリカの敵、サダム・フセインやタリバンを支援し最悪の大気汚染源であり、環境を破壊し続ける中国。欺くものが勝つという論理が正当化される中国は、まさに無法者国家だとさえ言う。

気がつかないうちに、中国は世界第2位の経済大国にのし上がろうとしている。「100年マラソン」での勝利も見えてきたことで、これまでになく好戦的になり、日本とも尖閣諸島をめぐって常に諍いが起きている状況だ。

これについて、著者は、「日本がどう対応するかが、中国のマラソン戦略が実行可能かどうかの試金石となる」とまで言っている。中国は日本が軍国主義に傾くことを恐れているそうだが、日本政府はまた重大な責務を負わされたものだ。

そうした中国の危険性を極めて真剣に危惧し、著者は中国が「マラソン」に勝利するのを防ぐ手立てをも論じる。
昨今の中国株の乱高下にみる経済の停滞をみるに、「マラソン」は順風ではないと思いたいが、だからこそ荒っぽい手段に出ることも考えられる。中国経済は鈍化してきたが、軍事費は増加し続けているという。

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個人的には「アメリカが世界の中心、アメリカが世界の覇者!」という考えにも相当うんざりさせられる。しかし、それに中国がとって変わることを考えれば、全然マシなのか。

もしもそうなれば、民主主義も個人の権利も世界から消え去ってしまう可能性もある。外来種が在来種をまたたくまに駆逐してしまうように、日本などたやすく滅ぼされてされてしまうに違いない。なんといっても繁殖力からして違う。

 

 

 

 

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