真夜中の北京 / ポール・フレンチ

日銀総裁は「マイナス金利は狙い通り」と言ってるらしいが、私なんて、まさに狙い撃ちされたようにズドンだ。5頭のクジラも大損は必至で年金もさらに少なくなっている可能性すらある。歳をとって振り返ってみるならば、もしかして今は激動の時代の始まりなのかもしれない。

さて、激動の時代といえば、なんといっても第二次世界大戦前後だろう。

本書は、その大戦前の北京で無残に殺害された一人の少女をめぐるノンフィクション・ミステリだ。
エドガー賞(MWA)の犯罪実話部門とノンフィクション・ゴールド・ダガー賞という、英米双方の権威ある賞に輝いている。
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物語の舞台は大戦前夜の北京である。当時の北京は清王朝の崩壊以来、次々襲ってくる襲来者の餌食となっていた。名目上中国を支配しているのは蒋介石の国民党だったが、北京は南侵をすすめる日本軍の足音に怯えている。

少女の死体が発見されたのは狐狸塔のそばだった。そこは夜は誰も寄り付かない場所だ。遺体は、肋骨が全て折られ体躯がむき出しになっていた。おまけに心臓が持ち去られていた。
10代半ばに見えたその少女は、元英国領事ワーナーの19歳の養女パメラだった。ワーナーは、中国通として一目置かれる存在だ。
パメラ殺害事件は、中国側と英国側双方が担当した。北京警察で訓練を積んだベテラン捜査官のハン警視正と、スコットランドヤードから天津英租界警察へやってきたデニス捜査官である。

捜査の過程で、パメラには二つの顔があったことが明らかになる。学校での目立たない少女としてのパメラと、独立心が強すぎ手におえない大人の女性としてのパメラ。

被害者が地位の高い外国人の娘であることは世間の注目を集め、おまけに現英国領事がワーナーを快く思っていないことで、事態は複雑になっていく・・・

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本書は、パメラの事件が北京の古い韃靼地区を夜な夜な走り回る狐の精の伝説にかぶせて語られているが、デヴィッド・ピースの「占領都市」を思い出させる。
「占領都市」も、「百物語」の怪物にかぶせられていた。その不気味さ、不穏さには圧倒されるが、本書も負けてはいない。

バッドランズという最下層の風俗街や、アヘン、ヌーディスト村、美しき両性具有のシュラの存在もまた物語を引き立てる。魔都といわれた当時の上海とは、また違った感じでヤバい。
時代背景と政治的な駆け引きや圧力による隠蔽により、パメラ殺害事件は迷宮入りする。だが、信念の人であったパメラの義父ワーナーの残した膨大な資料のおかげで、小説として現代に蘇った。

後半は、ほとんどがワーナーの執念の物語といっていい。ワーナーがたどり着いた結末はおそらく真実だろうし、もしも時代が違っていたならば犯人逮捕もできたかもしれない。

パメラ事件は、その後北京を、世界を襲う悲劇の予兆であったともいえるが、ワーナーの執念の調査はその流れに抵抗しようとしていたかのようにも思える。

 

 

 

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