病床の名探偵が挑む、時効を迎えた少女レイプ殺人。レイフ・GW・ペーションの「許されざる者」

紹介文に「スウェーデン・ミステリ界の重鎮による究極の警察小説」とあるが
厳密にいえば、警察小説ではない。主人公は元警察官ではあるが、既に引退しているので、探偵小説というほうが正しいのかな?


許されざる者 (創元推理文庫)

元スウェーデン公安警察のボスだったラーシュ・マッテン・ヨハンソンは、今は「プリマライフ(最高の生活)」を送っている(た)。
しかしある日、長年のツケが彼を襲う。こってりとした食生活と赤ワインを楽しんできた結果、脳梗塞で倒れてしまうのだ。一命は取り留めたが、顔の半分は垂れ下がり右腕には麻痺が。そればかりか、医者はもっと心配すべきなのは頭の血栓ではなく、心臓だというではないか。

英語版のタイトルは「The Dying Detective」。
まさしくヨハンソンは死にかけている。

意気消沈する彼だったが、担当の女医から25年前の少女強姦殺人事件の犯人についての情報を打ち明けられたことで、その事件に深く関わることになる。

生前牧師をしていた女医の父親は、懺悔の際にその犯人の名を耳にしたが、絶対的な守秘義務があったため口外はしなかった。ただ、その事件が迷宮入りしてしまってことで、死の間際まで苦しんでいたという。

分かっているのは女医の父の教区と、少女殺害の犯人が児童小児性愛者に違いないということだけ。しかも、この事件は時効が成立していた。
スウェーデンでは2010年に殺人事件の時効は撤廃されたが、この事件はわずかな差で時効が成立してしまっていた。もう法律上裁かれることはない…

この小説の面白さは、まず、ヨハンソンが病床の探偵であること、手足となってくれる愉快な仲間たちがいること、もうひとつは時効をむかえた犯罪にヨハンソンがどう対処するのかということにある。

ヨハンソンは、シャーロック・ホームズのようにあちこち現場を飛び回ることはできない。でも、あのマイクロフトなら安楽椅子に座ったままで難事件を解決できるはずと考える。
ただ、安楽椅子探偵を気取ってはみたものの、物事はそう容易くはいかない。
今でも筋骨隆々の元相棒に、リスベット・サランデル並みにタトゥーとピアスだらけの介護士、やたらと細かくマメな元税理士の義弟、金持ちの兄が寄越してくれたロシア人に助けてもらうことになる。
この愉快な仲間たちそれぞれのストーリーもなかなかで、特にロシア人のものは読ませるし、運命を感じさせる。
さらに、警察時代のコネに助けられることになるのだが、これに関しては安倍総理の忖度どころの騒ぎではない(笑)

もうひとつ、時効をむかえた事件の犯人をヨハンソンがどうするのかについては、読んでみてのお楽しみ。
人それぞれ意見はあるだろうが、ヨハンソンその人の元警察官としての結論は、納得のいくものだった。


ところで、本書の犯人は小児性愛者(ペド)だが、ペドは刑務所のなかでさえ忌み嫌われるという。どんな社会にあっても許されざる者だ。同性が好きだろうが、巨乳好きだろうがその人の自由だが、ペドは決して許されない(一部の犯罪行為を伴う性癖も同様だが)

けれど、本書の犯人のようにそれを理性で抑え込むことのできない人間はどうすべきなのだろう?犯罪を犯したくないと思っているが、自分の性癖を抑えることのできない人は?
シリアルキラーなどに多く見られるサイコパス、ソシオパスというわれる人々もそうだが、自ら好き好んで生まれてきたわけでなし、どうにかならないものか。

 



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