アマゾン依存症が読む「アマゾンが描く2022年の世界〜すべての業界を進化させるベゾスの大戦略」

つい最近もトランプに攻撃(口撃)されたアマゾン。日本でも存在感は大きい。<!–more–>
かくいう私も今やアマゾンなしに生活は成り立たない(かも?)。
それは言い過ぎだとしても、本はKindle版しか買わなくなったし、洗剤、シャンプー、蛍光灯等の消耗品もペットボトル飲料も全部アマゾンで買っている。

何かを買うにしろまず探すのはアマゾンプライム。洗濯機の糸くずとりのようなものは言うに及ばず、友人曰くヴァイオリンの弦止めさえも売っているという。
プライム会員なので(正確にはその家族会員)プライムの商品ならいちいち送料が発生することもない。
品揃えの豊富さ、安さ、配送のスピードにおいてアマゾンを上回る通販会社はない。リコメンドも的確だ。私より私のことをよくご存知で…(笑)

最近は、Fire TV Stick を新たに購入したため、プライム・ビデオも見始めたのだが、これがまたすごい。安価な韓流ドラマや邦画ばかりのWowowに比べるとなんとコスパの良いことか。これが通販のおまけなのだから勝負にならない。

と、「アマゾンのせいで街の本屋が潰れているのに、なぜ利用するのだ」とか、「商店街の小売店が閉店に追い込まれたのはアマゾンのせいだ」と言われようが、当面アマゾン利用をやめないと思う。利便性と実利性において現状アマゾンにかなうものはないから。
街から本屋が消えるのは文化の消滅という人もいるが、如何ともしがたい社会の流れだと思うし今更感しかない。保護主義にも賛同しかねるので、崇高な使命をお持ちの方にお任せしたい。

アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」 (PHPビジネス新書)

本書は、経営コンサルタント田中道昭氏によるアマゾンの考察・分析本だ。
冒頭に出てくるある男性の2022年の生活は、ドラマ「ユーリカ 地図にない街」的。しかし、さほど目新しいことではない。驚くべきのはそのアマゾン依存の程度だ。
アマゾンの無人コンビニに併設されたカフェで、マゾングラスに搭載されたAIアレクサにその日の自分の気分にあった音楽をかけてもらって、フリーランスとしてアマゾンのクラウドソーシングの仕事をする。そして仕事を終えて自宅に帰る途中で宅配ロッカーから自分が注文した書籍をピックアップするのだ。アマゾンづくし。
いやいやいや、2022年にもなればコレクターでもない限り、紙の本を買ったりはしないのじゃない?な気もするけれども、そこさえ除けばこんなスマート生活は、4年後、十分ありえる話だなと思う。

本の前半部分にはなぜアマゾンは強いのかと共に、オンライン書店としてスタートしたアマゾンは今何を目指しているのかについてページを割いてある。

アマゾンが強いのは、ずばり「顧客第一主義」を徹底しているから。豊富な品揃え、低価格、配送のスピードは他の追随を許さない。
特に価格については他社の競合が難しいほど低く設定されている。その利益率はわずか3パーセント。
ただ、これにはちゃんとカラクリがある。実は収入の大部分は通販事業ではないという。収益の大部分はAWS事業によるもので、AWSとはネット通販を支えるためのクラウドコンピューターシステムを社外に公開してビジネス化したもの。つまり、アマゾンは通販会社ではなくシステム会社なのだ。

しかも、「サイバーセキュリティの安全性で選ぶならアマゾン」と言われるほどにその優位性は高く、コストは安い。そういえば、アマゾンから顧客データが流出というのは聞いたことがない。

そのAWSによる収益は新たな顧客満足につなげるべく他の事業に投資されている。
アマゾンは税金を払わないことでも有名な会社だが、そもそも配当もゼロだし、CEOとしてのベゾスの給料も8万ドル程度と聞く。まあ持っている株式の時価総額はすごいけど。とにかく徹底している。

またとてつもなく巨大な市場を持っているアマゾンはビッグ・データも持っている。かつてのアマゾン幹部はアマゾンは通販会社でもシステム会社でもなく、その本質はビッグ・データ企業だ言っている。

そのアマゾンのビッグ・データの出口、集大成ともいえるのがAI人工知能。最近グーグルやラインのAIスピーカーのCMを目にするようになったが、アマゾンにもアマゾン・エコーという製品がある。
これに搭載されている双方向の音声認識AIアレクサは、他のメーカーが製品に組み込むことのできるように開発キットが無料公開されているという。そのためアレクサが搭載された家電は700以上にも登るそうだ。
スマート家電、スマートハウス、そしてスマート世界へ。J・ディーヴァーの「スティール・キス」も古く思えるかもしれない。

また、ベゾスの野望は地上にとどまらず、宇宙事業に向かっているという。誰かがいうようにベゾスは本当に火星人なのかもしれない(笑)

現時点でのアマゾンの弱点は強すぎること。ベゾス本人の強烈なキャラクターと相まって、アマゾンという企業を嫌い、叩く向きも多い。

よく言われるジョークに、「アマゾンはインフラになるまで赤字覚悟でやる。一旦インフラになったら爆上げする」というものがある。
だが、実はインフラ化するまでもなく小売以外の事業で利益は出ているし、インフラ化してしまったらしてしまったで、これまで掲げてきた「顧客第一主義」の筆頭たる低価格の看板を下ろすとは思えないけれど…
配送についても今の時点では大手配送業者の値上げを受け入れたが、頭を下げたままではいないだろう。

アマゾンの強さは資本主義社会において顧客第一主義を貫き、正当な競争に勝ち抜いてきたからに他ならないが、強すぎる巨人にどの会社も対抗できなくなると話は変わってくる。巨大企業が国家の役割を代替しては困るのだ。

 

本書の締めでは、顧客第一主義の裏返しとして事業コストを抑制しすぎること、つまり労働者の利益配分についてやんわりと触れ、「社会の公器」としての責任を問うている。
アマゾンの巨大倉庫の作業などは、「潜入ルポ アマゾン・ドット・コム」 を読むと同情してしまうが、この種の問題に全て丸く収まる答えはない気もする。
できるのは最低賃金や労働法の縛りを厳しくすることだろうが、アマゾンの場合、機械化を進めてリストラするだけなような…

どこからもクレームがこない綺麗なまとめ方ではあるけれど、少し物足りなさもあったかな…

 

 

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