フィクション

ダメ男だけじゃない!ニューヒーロー・シリーズ誕生のデイヴィッド・ゴードン「用心棒」

2018-12-12

あの「二流小説家 」のデイヴィッド・ゴードンの新作。 

「二流小説家 」はもちろん、あまり評判のよくなかった二作目の「ミステリガールも私は割と好きだった。というかかなり好きだった。この作家の独特のペースというか雰囲気が好きなのだ。
終始コメディタッチなのだが、それはまさに「喜劇だけが醸し出すことのできる悲哀」だ。

 

一方で、高学歴ダメ男しか描けないのかなとも思っていた。
ところが、ところが今回見事脱却している(?)ではないか。

本書の主人公ジョー・ブロディは、ストリップクラブの「用心棒」なのだ。
我らがジョーは「二流小説家 」のハリーや「「ミステリガール のサム同様、一流大学出身で(といってもジョーは中退だが)で、ドストエフスキーを好むインテリではあるがヘタレのオタクではない。
前著2冊のダメ男どもと違い、元陸軍特殊部隊出身で喧嘩も強い肉体派なのだ。
しかもイケメン!イケメンは正義だ!

しかし読んでいくと、このジョーが実に運のない男であることがわかってくる。
奨学金特待生だったハーバード大学をなぜ中退せざるを得なかったか…
その後入隊した陸軍特殊部隊で何が起こったのか…
ジョーもまた負け組なのだ。自分自信の才覚さえあれば、未来を切り開けるというアメリカンドリームはもう消え失せてしまったという社会諦観すら感じられる。

ゴードン作品は全部、そんな負け組の一発逆転劇を描いているといってもいい。
ただし今回は終始ハードボイルド調だ。前作までは、「主人公が不可解な事件に巻き込まれ、怪しげな人物たちと出会い、事件の真相を探る」パターンだったが、実はそれはチャンドラーと同じ基本構造なのだ。となれば、ハードボイルドへの転換は当然の流れだったのかも。

ジョーを取り巻く面々も個性派揃いだ。
幼馴染のジオはマフィアのボスだが、人知れぬ秘密を抱えている。初っ端ジョーを逮捕した女性捜査官ドナとは今後もいろいろとありそうだ。
忘れてはいけないのが、ロシア系美女の金庫破りのエレーナ!
エレーナとジョーのコンビはちょっとだけ「ゴーストマン 時限紙幣」を彷彿とさせてわくわくした。

もちろん続編があるだろう。残念ながら電子版には解説はないのでわからないが、ないとおかしい。だってジョーは本書でただの「用心棒」ではなくなるのだから。そしてジョーには明らかな敵もできた。

ジョー自身も読者にとってまだまだミステリアスな存在で、それがまた期待を高める。

 

 

 

 

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