フィクション

ソ連崩壊直後のロシアを舞台にした異色のヒーロー・ミステリ「スターリンの息子」

2019-08-13

毎日毎日暑くて、もう東南アジア以上の湿度と気温。暑さ耐性が弱いゆえに真夏の旅行はハナから無理。十分に涼しくなった頃を狙っている。弾丸だけど今から楽しみ。旅行は計画段階が一番楽しかったりする(苦笑)

計画のかたわらで読んだのは、スウェーデンものの2作品。どちらも話題作の「スターリンの息子」「1793」
北欧ミステリはいい加減もういいかなとも思っていたけど、いずれも史実を素にしているもので、これまでの陰鬱一辺倒の警察ものとは趣向も違いなかなかよかった。
「1793」についてはまた後日。

 

スターリンの息子 上 (ハヤカワ文庫NV)
スターリンの息子 下 (ハヤカワ文庫NV)

タイトルからも察せられるとおり、舞台はほぼロシア。それもフルシチョフ失脚後ソ連邦が崩壊してロシア連邦が誕生した当時の不安定な時代だ。
時代設定は1996年、ロシアは重大な局面を迎えている。ロシア連邦となって初の大統領選が行われたのだ。自由化推進のエリツィンか、はたまた旧ソ連の流れを組むジュガーノフか。
「投票する者は何も決めない。集計する者が全てを決めるのだ」
かのスターリンの有名な言葉だが、その言葉の意図する通り、民主化に向かって歩み始めたばかりと思われたロシアは混沌の真っ只中にあった。

主人公はマックス・アンガーという若者だ。元スウェーデン軍の潜水工作員で今はストックホルムのシンクタンクでロシア専門のアナリスト。
恋人のパシーも同じ会社のサンクトペテルブルグ支社に勤務していたが、突如行方不明になってしまう。失踪直前彼女は「あなたの探していたものを見つけた」と言い残していた。
実はマックスの父親の出自は謎に包まれており、彼は独自に調査していた。彼女はそれに繋がるものを発見したにちがいない。
パシーを探すためロシアに飛ぶマックスだったが、彼の前に旧ソ連時代の復活を目指す人物が立ちはだかる…

物語の核となっているのは、マックスの父親の素性とパシー救出の二本立てだが、それがそう単純な話というわけにはいかない。というのも舞台がロシアだから。おそロシアとはよくいったもので、民主主義が常識の我々とは今もって常識も異なる。
しかも著者はスウェーデンのテレビ畑出身だ。混沌とした時代背景を活かしつつ、盛りだくさんの内容でテンポよくストーリーは展開していく。
良い意味でも悪い意味でもテレビ的というか、マックスを元工作員という設定にしたおかげで(苦笑)多少のアクションもスリルもあり。これぞスウェーデン!というような同性愛もあり(苦笑)
また、あの「チャイルド44」を思い出させるようなシーンも登場する(あの小説ほど詩的ではないけれども)

ピュリツァー賞受賞作のノンフィクション「レーニンの墓」にしてもそうだが、史実にしろフィクションにしろ、少しでも政治に絡むものはまだまだ内側から描かれることはないのだろう。

「レーニンの墓」を読んだ時は、あの時代こそがロシア激動の時代だったと思ったが、ドラスティックに変わったようでいて、実は何も変わってないのがロシアという国なのかも。
今も現役で今後もしばらく現役と思われるあの人が、どこからともなく、スルッと歴史舞台に登場した経緯なんかも理解できて興味深かった。全然どこからともなくなかったのね…

本書は三部作らしいが、ハヤカワから次がでるかどうかは本書の売れ行き次第なんだろう。次はいよいよ「例のあの人」の時代になるのだろうし、是非とも読んでみたいけれども。

 


 


 

 

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