翻訳ミステリ大賞コンベンション 2015に行ってきた!

翻訳ミステリシンジケート主催のコンベンションに行ってきた。
今年の会場は京急蒲田駅そばのコンベンション施設。

横浜からは急行2駅と近くなり、“畳にザブトン”の去年までに比べると式典感UP!

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“「七福神」でふりかえる翻訳ミステリーの1年”からスタート。
司会はおなじみ杉江松恋さん。
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今日もインパクト抜群のファッションでご登場。
実はこの上着が気になっておりお背中撮らせていただいた。
なんでも新宿二丁目で職質されたこともあるそうだ…#$%%&’
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杉江さんをはじめ、北上次郎さん、吉野仁さん、川出正樹さんと共に昨年度のイチオシ作品を振り返る

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それぞれの2014のベスト作品は以下のとおり。

北上さん 表のベスト『ハリー・クバート事件 』、裏ベスト『暗殺者の復讐 』
吉野さん 『その女アレックス』
川出さん 『探偵ブロディの事件ファイル』
杉江さん 『世界が終わってしまったあとの世界で』

お〜〜〜〜!私の昨年のベストオブベストも北上さん同様『ハリ・クバ』!「このミス」でももっと上位でもいいと思ってた。
北上さん曰く、欠点はただひとつ
「作中に挿入されている”世界で何千万部と売れた小説”というのが、ショボすぎること。」

ウラのベストはもう説明不要(笑)
マーク・グリーニーからは離れられない運命なのだ。

杉江さんのイチオシは、ル・カレの息子ニック・ハーカウェイの『世界が終わってしまったあとの世界で』。
素晴らしい青春恋愛SF小説なのだが、アマゾンレビューが☆2つという低評価のせいか全く評判にならなかったのだとか。全部何もわかってない奴のレビューのせい(笑)

アマレビューの影響力は侮れないが、本の面白さは人によって全然感じ方が異なる。それが証拠に、私も杉江さん同様、ウィリアム・K・クルーガーの『ありふれた祈り』 は、すご〜く良いと思ったが、横浜読書会では滅多斬りのボロカス…(苦笑)

しかし昨年はなんといってもその女アレックス』 の大躍進だろう。フレンチミステリが盛り返した年でもあった。(今年も『悪意の波紋』がとてもいい)

日本では馬鹿受けした『その女、アレックス』だが、ドイツではどういう風思われてるのか?!ドイツ人翻訳家のマライ・メントラインさんがドイツのアマゾンレビューを元に分析してくれた。
ドイツ語版のタイトルは『私があなたが死ぬのをみたい』という意味で、割といい出版社から出ており、ルメートル自体も割と読まれている作家なのだそうだ。
ただし、レビューは平均☆三つ。
コメントは「淡々としていて研究所を読んでいるみたいで味気ない」「感情移入できない」「描写が説明っぽい」など、かなり冷ややかだという。

神視点というのにドイツ人が不慣れなのと、ドイツ人は頭が堅い人が多いため、ウィットが汲み取れなかったのではないかという分析だった。
お国柄によっても反応は様々だということだ。

そして、本日のメインイベント。
翻訳ミステリー大賞リアルタイム開票&授賞式。

最終候補作は、『ゴーストマン 時限紙幣』ロジャー・ホッブス/田口俊樹/文藝春秋社、『その女アレックス』 ピエール・ルメートル/橘明美/文春文庫、『秘密 』ケイト・モートン/青木純子/東京創元社、『もう年はとれない』 ダニエル・フリードマン/野口百合子/創元推理文庫、『容疑者 』ロバート・クレイス/高橋恭美子/創元推理文庫 の5作品。

今年は接戦で、最後の1票まで争ったが、大賞は…
ケイト・モートンの『秘密』
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翻訳の青木純子さんは、『忘れられた花園』でも受賞経験アリ。なんとV2達成!
おめでとうございます!

わずか2票差で及ばなかったのは『もう年はとれない』
残念、惜しかった。でも、全国のバック・シャッツ ファンの皆さん、続編は8月刊行らしいですよ!

そして、なんと読者賞も『秘密 』が獲得!
ダブル受賞、おめでとうございます。

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2015042500.png← ※クリックで拡大します。
毎年票が割れまくる読者賞の10位以下はこんな感じ。

ケイト・モートン強し。
女性票をしっかり集めた。

私が票を投じたのは、『ハリ・クバ』『火星の人』 窓際のスパイの三冊。
ええ、ものの見事にトップ3を外しております。
『窓際のスパイ』にいたっては35位か。続編もCWAなのに。

続いては、出版社対抗ビブリオバトル!

出場したのは、文藝春秋、集英社、小学館、東京創元の編集者の方々だ。

あのシャイニングの続編、S.キングの『ドクター・スリープ』、
ドイツの新鋭作家の歴史ミステリ『ゲルマニア』、
北欧のサイコサスペンスの女王が描く『バタフライ・エフェクト』
マカヴィティ賞最優秀長篇賞受賞の女性探偵小説『探偵は壊れた街で』 と魅力的な作品がズラリ。

※早川の方は仕事の都合で欠席となり、代わりに杉江さんが紹介してくださった。なのでバトルには含まれず。

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白熱のビブリオバトルを制したのは…
集英社の『ゲルマニア』!
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私が気になったのは、『探偵は壊れた街で』とニック・ハーカウェイの『エンジェルメイカー』。キングは私はどうせ自動的に購入するので。

『エンジェルメイカー』は、なんでも”レンガ並みの厚さ”のポケミスなんだそうだけど、えーと、それって、おいくら万円になるので???(恐)

 

休憩を挟んで、翻訳ミステリーにかかる小部屋企画へ。

この日の企画は、「フランス・ミステリの小部屋」
「ネオ・ハードボイルド作家・探偵の月旦」
「マライがいく!世界ミステリ見聞録」の三つ。

私は、「ネオ・ハードボイルド部屋」へ行ったのだが超ディープなレクチャーだった(笑)
ネオ・ハードボイルドとは、ハメット、チャンドラー、マクドナルドの御三家ではない系譜のハード・ボイルド、つまりマイク・ハマーを生み出したミッキー・スピレインの系譜のことなんだそうだ。

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そのネオ・ハードボイルドの系譜に連なるローレンス・ブロックの『獣たちの墓』 を原作にした映画『誘拐の掟』は5月30日公開らしい。

珍しくジャンケンに勝って、田口俊樹さんからのプレゼント本をゲット!
ありがとうございました。

 

 

 

 

2件のコメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 5f461b5ec95b6601ba30ea573a0abf03
    盛りだくさんで読み応えのあるレポート!
    愉しく、興味深く読ませていただきました。
    ●2015翻訳ミステリ大賞コンベンション
    イカツイおっさんが司会されているのですなぁ(失礼)。
    『その女アレックス』以外は却下なのですが、
    このヒトににらまれたら、よくわからん長いタイトルの本も、
    読んでいないのにホメてしまいそう。
    それは別にして、黒原敏行の訳なのでしたか。
    (自分の中ではかなりこの本関心高くなったかも)。
    『アレックス』の上位に『秘密』が来ますか・・憮然。
    読んでいないので、何にも言えない。
    Spenthさん投票の『窓際のスパイ』(!)・・自分も好きな小説。
    35位でも凄いと思いましたよ。
    ●出版社対抗ビブリオバトル・・最も注目しました。
    何といってもキングのシャイニングの続編・・刊行されますか!
    たいへんよい情報をいただきました(感謝)。
    しかし各出版社が売り込みに凌ぎ削ったところで、
    キングは何もしなくても売れるだろうし、
    他は当然に苦戦・・残酷な明暗。
    (文春はキングを出したところで反則負け決定!?)。
    『ゲルマニア』はコワモテのタイトルでおもしろそう
    (『将軍たちの夜』みたいなミステリなのかな?)。
    ●ネオ・ハードボイルド作家・探偵の月旦
    ブロック原作のこれ、ようやく映画化されたのですなぁ。
    もう十年近くまえから映画化の話はあった(耳にしていた)ような。
    ブロックはこの本作含む倒錯三部作までが、自分は大好きなのでした。
    スカダーは二―ソン(『96時間』)かぁ・・ナルホド。
    (クルーニーだと甘い感じになってダメなのかな?)。
    愉しい記事がたっぷり・・堪能できました!
    ではまた!

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    naoさん、こんばんは!
    >『その女アレックス』以外は却下なのですが、
    ええ?そうなの? !
    ニック・ハーカウェイの『世界が終わって〜』は、私は読もうかなと思ってます。
    実は買うだけ買って読んでなかった本なんですよ。
    杉江松恋さんは…ファッションは別としても、実は案外乙女だったりして?(笑)
    >『アレックス』の上位に『秘密』が来ますか・・憮然。
    読んでいないので、何にも言えない。
    私も同じです。 ただ、前作の『忘れられた花園』よりいいらしいですね。
    ただ、翻訳者が投票権を持つ「翻訳ミステリ大賞」もそうですが、 「読者賞」もまた女性票が多いのかなぁと。
    だって読書会特に横浜なんかは女性ばっかりですもんね(笑)
    >ブロック原作のこれ、ようやく映画化されたのですなぁ。
    ちょうどいただいた『獣たちの墓』を読み終わりました。
    映画は本とはかなり筋が違うらしいのですが、これ、かなりエグいですよね…
    ただ、ブロックはやっぱりうまいですよね!ディテールもいいし、高級娼婦のエレインの、少し冗長なきらいさえするセリフもすごくいい。何より、読ませます。
    講義によれば、ネオ・ハードボイルドでは「探偵の自信の喪失」というのが特徴のひとつなのだそうですが、本書の解決の仕方にもそれが垣間見えている感じ。 依頼人のために最大限の努力はするけれど、正義の鉄槌を自分で下そうとははしないし、それをやる役割を担っているとも思っていない。個人にできることの限界を知っており、ある種の諦観してもいる。
    そのことも含め、私は陰のあるリーアム・ニーソンはハマリ役と思いますが、いかがでしょう?
    あと新刊情報としては、東京創元から5月29日に出る『夏の沈黙』が面白そうかな。
    東京創元の編集の方のイチオシなのですが、この方、株だけでなく、本の趣味も似ているようなので、まず間違いないかと(笑)なんでも2015年度最大の大型新人のデビュー作で、世界25カ国で出版が決定しているそうですよ。
    とうことで、ではまた!

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