意外?だけど当然だった?「スピリチュアルズ ”私”の謎」

「言ってはいけない-残酷すぎる真実」等々、割と身も蓋もない本で知られる橘玲氏の新刊。

一般に「スピリチュアル」という言葉は、霊的なとか神秘的なという意味で使われることが多いが、本書では心理学でいう「無意識」に「魂」を重ねた言葉として使われている。
わかりやすい例えだと、攻殻機動隊の草薙素子がよくいうところの「ゴースト」だろうか。

心霊現象的なことや占い師が口にするような類のことではなく、「わたしとは何ものか?」と言うことに、本書は科学的に挑む。


スピリチュアルズ 「わたし」の謎 (幻冬舎単行本)

 

大雑把に言うと、私たち一人一人が持っている性格(パーソナリティ)は、8つの要素でできていると言う。
それは、心理学的に言うところのビッグファイブたる「外交的/内向的」「楽観的/悲観的」「協調(同調)性」「堅実性」「経験への開放性」に、「共感力」「知能」「外見」を加えたものだ。
それぞれの度合いと組み合わせの妙で、「私」はできている。

「これは事件だ!驚け、そして目覚めよ!」というが、考えてみれば脳も臓器の一種。機能やその働き方のタイプがあるのも当然かなぁとも思う。

前半部分はビッグファイブ理論の説明。
詳細については読まれたいが、なぜFacebook社が、Google、Amazon、Appleと肩を並べるほどに力を持っているのかと言うことがよくわかる。
というか、Facebookが持つデータの価値は、GAFAで最も高い。
誰が誰に「いいね」をしたかを分析することで、性別、人種、異性愛者か否か、保守派かリベラルか、キリスト教かムスリムかまで高い精度でわかるらしい(その上、経済状況や交友関係も)

このビッグファイブは、外交的で、楽観的で同調性があり、堅実性があり、経験への開放性が高いが絶対良いし、そうあるべきだと一見思いがちだが、実はそうでもない。
それらにはそれぞれ一長一短があるし、時にトレードオフになっているからだ。

読み進めていくと、ジェームス・ファロンの「サイコパス・インサイドや、愛は4年で終わるのが自然だという本でセンセーションを起こしたヘレン・フィッシャーなども登場。

「サイコパス・インサイド」は脳科学者がある日なんとなく見た脳スキャン画像の中に、異様にサイコパス傾向の強いものを発見したら、それがまさかまさかの自分のものだったという話だ。本書の中でも割と詳細に紹介されているが、なかなか面白いのでおすすめ。

どうして私はこうなんだろう?あの人はどうしてああなんだろう・・・と言った類のことは、大体これで説明できる。

世の中のリーダーにサイコパス傾向の強い人物が多い理由も、
博愛主義者として有名なガンジーやマザー・テレサが実は薄情で残酷な人だったということも説明されており、なるほどと納得した。

身も蓋もない「不都合な真実」は世の中にたくさんある。
外見が良いほど成功しやすいし、知能の遺伝率も年齢が上がるととともに7割以上まで上昇するらしい。
うん、知ってたけどね的な・・・

遺伝のせいで知能が限定されるなら、努力すればいいじゃないかと思うが、意志力は実は消耗品かもしれないという研究もあるそうだ。
例えば、太め体型を気にしてダイエットを頑張ると、意思のリソースを使い果たしてしまうことで勉強や仕事の成果は上がらないという。
また、貧困家庭に育った人が厳しく自分を律することで社会的に成功しても、様々な病気を発症したりして老化を早めてしまうなどなど・・・

私たちは残酷な世界に生きている。
人権問題、差別問題がなぜなくならないのかについての考察も、私には非常に納得できるものだった。

著者も言うように、結局のところ「私」以外のものにどれだけ憧れようが、持っているものでなんとか折り合いをつけ、やっていくしかない。

 

 

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