フィクション

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン/ ピーター・トライアス

2017-01-12
あと2年で平成が終わり新しい元号に変わるらしい。日本も変わるが、米国も劇的に変わりそうだ。トランプ次期大統領が何か発言するたびに、為替も株価も大きく動く。ほんと迷惑極まりない。
 
しかも主な発信手段はツィートで、内容のほとんどが「攻撃、挑発、自慢」だというから、始末が悪い。やるなら、自慢だけにしておいてください。
だがアメリカが長らく座っていた世界の覇権国家の椅子から滑り落ちようとしているのは火を見るより明らかだ。
 
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さて、本書の舞台は「高い城の男」同様、第二次世界大戦で日独の枢軸国側が勝利した世界なのである。
アメリカ西海岸は日本の軍部によって統治され「日本合衆国」となった。
主人公の石村紅功(ベン)は、帝国陸軍でゲームの検閲をしている。ある時、ベンは上官の六浦賀将軍から特殊な手段で電話を受ける。それは、連絡係の体内に埋め込まれた”肉電話”で、憲兵や特高に探知できない唯一の手段だった。
将軍は彼の娘のクレアが死んだため、自分に代わって葬式をあげてほしいというのだ。
その電話の翌日、ベンの元に特別高等警察の槻野昭子がやってくる。
六浦賀将軍は特高が調査中のあるゲームに関与している疑いがあり姿をくらましていたのだ。そのゲームとは「アメリカ合衆国」略してUSA。アメリカが戦争に勝った架空の世界を舞台とした反日的なゲームで、今やUSJ全体で人気を博しているという。
時を同じくして、ロスのアーケードでUSJゲームのハイ・ジャックが起こる。
 
 

 

 
売り文句は、“21世紀の「高い城の男」で、本書はそのオマージュというのだが何もかもが違う。
 
看板に偽りあり。
SF小説というよりラノベじゃないかな。
 
第二次世界大戦で枢軸国が勝ったという設定は、「高い城の男」から、科学技術や義体などは「攻殻機動隊」、日本皇国の特高や憲兵、身内をも密告するという恐怖支配はスターリンの大粛清時代かはたまたオーウェルの「一九八四年」かと、ごった煮感が拭えない。
豪華な素材を手当たり次第入れてはみたものの、全然美味しくならなかったという感じだが、最近の若い読者はこういうのが好みなのだろうか。
ロボットの装丁に惹かれてこの本を買った読者は、かなりがっかりするにちがいないと思うのだけど。安くないし。
 
 
また、天皇を現人神として崇拝し、国家の精神的中枢とする「大日本帝國」そのままの日本が、アメリカの西海岸を「日本合衆国」として統治するというのは、私にはちょっと理解しがたい。
合衆国とは、独立した自治権を持った州が連携し治める国家だと認識しているのだが、帝国主義とは相容れないのではないか。
 
それに、特高の昭子が、上官の将軍からの電話に「こんにちは、将軍」などといって出るものだろうか。大日本帝國からは想像がつかないほどのフランクさだが、かたや、軍人たちは集会で「血固め」の儀式とかをやっているというちぐはぐさ。かなりゲンナリしてしまう。少しは説得力があればいいのだが、ただ著者には教養がないんだろうなぁと思わせるだけなのだ。
 
瑣末なことはさておき、この物語の中の日本は、現代の我々日本人から見れば驚くほどに残酷で、乱暴で、滑稽で、全くもって支離滅裂なのだ。なんだかなぁと思ってしまうが、立場が違えば見方も変わるというものだ。韓国系の著者からみれば十分にそうなのかもしれない。

 

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