核武装したギャング政権の金を奪え!ガブリエル・アロン・シリーズ「報復のカルテット」

これほど長く続きながら、常に新鮮なダニエル・シルヴァのガブリエル・アロンのシリーズ。今回もまた「全米初登場1位」だそうだが、それもさもありなんで面白い。


報復のカルテット

著者はアロンにプーチンをして「核武装したギャング政権のゴッドファーザー」と言わしめているが、これほどマトを得た表現もないw
ただ批判を覚悟で言えば、今回の侵攻についてはロシアは悪だが、ウクライナが善というわけでもないと思うが。世の中はそう単純ではないし二元論では成り立ってはいない。

物語は、ロンドン在住の反体制派のオリガルヒ、ヴィクトル・オルロフが、神経剤によって暗殺されるところから始まる。
オルロフはかつてアロンが彼の妻とともにロシアに拘留されたとき、救い出してくれた恩人だった。
第一発見者は、アロンの旧友でロンドンの画廊主イシャーウッドの共同経営者にして、MI6のクリストファー・ケラーの恋人のサラ。彼女はコロナ禍で冷え込む経営を打破しようと、偶然発見した名画をオルロフに売ろうと尋ねてきたのだ。
だが、彼女の前に先客があった・・・

今の時事問題は専らロシアのウクライナ侵攻。この戦争がニュースにならない日はないが、今回のテーマはそのロシアの皇帝の金だ。
つまりはそもそも因縁深いロシア皇帝に対し、今回アロンはオルロフの仇をとるという設定。その手段は、最も相手がダメージを被る「ロシアのダーティーな資金を横取りする」というもの。

少し前にドイツ銀行の破綻が懸念され話題にもなっていたが、今回シルヴァが描くのは、ドイツ銀行をそのままモデルにしたライン銀行という架空の銀行。この銀行はロシアの汚れた金をロンダリングし手数料を荒稼ぎしている。
つまり、反体制派の新聞社の社主でもあったオルロフは、このロンダリングを糾弾しようとして始末されたのだった。

著者らしい仕掛けで繰り広げられる作戦は、いつもながら読み応えがある。
残念ながら、「ノータイムトゥダイ」で007はひとまずの完結をみたが、スパイものに付き物な高級感あふれる舞台設定やアクションも、本シリーズでいまだ楽しめる。
「汚いものには、美しいものを添えて」というのは著者の定石。ダーティーな作戦には美しい餌が必要だが、今回のヒロインもまた魅力的だ。

話は少し逸れるが、間も無く開催されるウィンブルドン・テニスでは、ロシアとベラルーシの選手は出場不可とされている(個人的には選手に責任はないと思うので感心はしないが)
英国がここまでロシアに対して厳しい姿勢を貫くのかも、本シリーズを読んでいるとよくわかる。
本書で繰り返し描かれているのは、ロシアは今回のウクライナ侵攻に限らず、巨額のダーティーマネーを使って裏でこれまでも世界で混乱を引き起こしているということだ。
アメリカ大統領選とアメリカ国民の分断、英国連邦下においてはスコットランド独運動への支援等々。
もしもあのときスコットランドの独立が決まっていれば、英国は大打撃を被り経済面軍事面ともに大幅な後退を余儀なくされていただろう。

この長いシリーズは本書だけでも楽しめるよう、これまでの経緯の補足説明も丁寧になされてはいるが、やはりある程度まとめて読んだ方がより楽しめると思う。
残念ながらシリーズ全ては翻訳されておらず、前半は歯抜けになっているが、ハーパーコリンズに版権が移った「亡者のゲーム」以降から読めばそれで十分。
以降の作品はどれも秀作揃いだが、私のお気に入りはクリストファー・ケラーがアロンによって修復された「英国のスパイ」です。

それにしても全仏ナダルV14超うれしい!!!

 

 

 

 

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