フィクション

サウジの未来はいかに?ガブリエル・アロン・シリーズ「過去からの密使」

2020-05-06

ダニエル・シルヴァによるガブリエル・アロン・シリーズの2020年4月、現時点での最新刊。

ガブリエル・アロンとは誰や?という方のために説明しよう。
彼はイスラエルの諜報機関の長官なのだ。
アロンのシリーズも結構長くて、最初は絵画修復師を隠れ蓑にした一介のスパイだったけど、時を経て出世したのだ。

イスラエルといえば、「全世界に同情されながら滅亡するよりも、全世界を敵に回して戦ってでも生き残る」が国是。
キナ臭いことこの上ないが、絵画修復師としてのアロンの特性がそれを中和している節も。

現在進行形の世界情勢を反映したストーリーは読み応えもバッチリ。
物語もさることながら、毎回楽しみにしているのが、「著者ノート」という著者あとがきのようなもの。

「しつこくいうけど、これはフィクションなんだからね。イスラエルにやって来てガブリエルの自宅や<オフィス>を探してもないからね」
と、ファンに向けたお馴染みのセリフを枕詞に、自身による解説と世界情勢分析がされていて、これが毎回とても面白い。

 過去からの密使 (ハーパーBOOKS)

で、今回のテーマはずばり、サウジアラビアの未来。それによっては中東情勢も大きく変わる。
サウジといえば、記憶に新しいのがイスタンブールのサウジ大使館で殺害されたサウジ人ジャーナリスト、カショギ氏の事件。彼はムハンマド皇太子と体制に批判だったことから、皇太子の事件関与が取り沙汰されたが、真相究明はされていない。

リアル世界に酷似した本書の世界においても、品行方正とはいえないサウジの次期国王のハリード皇太子を中心に物語は展開する。
リアル世界同様に、化石燃料から再生可能燃料への転換が完了すると思われる20年後には、サウジの原油は無価値になる。このまま指を咥えていれば、王国は砂漠の民が戦闘を繰り返すだけの不毛の地になるだけ…
これまで厳しいイスラムの戒律に縛られてきたが、将来の労働不足を補う第一歩として、女性に車の運転やスポーツ観戦の権利を与えるなどの改革にとりかかった。
反面で自分に批判的なジャーナリストを排除するなど、衝動的で暴走しがちな面もある。

そんな皇太子のたった一人の王女がフランスで誘拐されてしまう。
犯人の要求は皇太子が王位継承権を10日以内に放棄すること。
ハリード皇太子はキュレーターのサラを通じ、ガブリエルに助けを求める。サラは以前CIAで仕事をしていたことがあり、ガブリエルと懇意なことを知っていたのだ。

ハリードを排除したところでさらにろくでもない人物が王座につくだけ。それに、彼に協力すれば一生恩に着てイスラエルの協力者になるだろう。
ガブリエルはそう考え、王女奪還作戦に手を貸すが…

ああ、ああ、、、
もう読み終わってしまったわ

続きはまた一年も待たないと (´;ω;`)

 

単なる誘拐事件と思うなかれ。
世紀の裏切りの続き、「赤の女」とはダイレクトで繋がっている。
本書だけでも楽しめるようにはなっているが、読まなきゃ損。

昨日の敵は今日の友、その逆も然り。

実際、サウジは長い歴史をもつアメリカとの絆を切る可能性もあるし、ロシアと手を携える可能性もある。

先の原油価格のマイナスの背景は、サウジとロシア、それにシェール革命によって今や原産国となったアメリカの三つ巴のチキンレースによるものだ。
一人当たりGDPではすでに世界で60位以下(2018年のデータ、日本は26位)
しかも頼みの綱の原油価格暴落に加えて、コロナ禍と経済の先行きは不透明さを増しているが、したたかさと強さがある。

今後、アフター・コロナの世界では、米中対立がメインストリームになると思っていたがそう単純でもなさそう…
最近読み始めたマーク・グリーニーの新作でも、それは示されている。

ハーパーコリンズジャパンから文庫、電子化されて買いやすくなった。
一番好きなのは「英国のスパイ」
コルシカ島とか行ってみたいな〜

 

 

 

 

 

 

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