フィクション

魅力的なコンビによるイタリアンミステリ「血の郷愁」

2019-10-22

最近のイタリアン・ミステリーがなかなかいいのだ。サンドローネ・ダツェーリの「パードレはそこにいる」のシリーズも結構好きだが、こっちはもっと好きかも。

ちょっとダサいのが「血の郷愁」というタイトルだが、読んでみると、この「血」に意味を持たせようとしているのがわかる。


血の郷愁 (ハーパーBOOKS)


物語は、美しい女性の凄惨な遺体が発見されるところから始まる。内臓が抜かれた身体のいたるところには噛まれた跡があり、ふくらはぎは一部食べられた痕跡が…
ベテラン新聞記者のマルコは取材を始めるが、インターンのイライアから、この事件がイタリア初の連続殺人犯とされるヴィンチェンツォ・ヴェルゼーニの手口に酷似していることを指摘される。
早期退職を迫られている定年間近のマルコと、過去のトラウマから精神不安定なイライア。コンビを組んだ二人は事件を追うのだが…

 

ストーリーは割と定石通り。
ショッキングで凄惨な事件を個性的なコンビが解決するというものだが、北欧モノに比べるとどこか「ゆるさ」があって、そこがいい。
訳者の方も指摘しているが、いかにもイタリアだなぁと思うのは、アペリティーボ(夕食前のバールでのお酒)や食事に手を抜かないところ。
日本の刑事ドラマのように、車の中でアンパンと牛乳はあり得ない(笑)

マルコとイライアがベルガモ地方の星付きリストランテで食べたカゾンチェッリ、食べてみたーい!


イタリア人はつくづくエピキュリアンだなぁと思うが、反面、マルコは仕事バカでもある。
“仕事を通して得られるもの”に焦点が当てられているのも本書の特筆すべきポイントだろう。北欧警察モノにありがちな自らをすり減らすような犠牲的悲壮感はない。もっと個人的なものだし、且つ大らかだ。

歴史的殺人犯になぞらえた猟奇連続殺人はキャッチーではあるが、個人的にはマルコをはじめとした人物造形や、彼らが何をどう考え、どんな暮らしぶりをしているのかの方が面白かった。
しかし「パードレ」もそうだけど、イタリアは猟奇モノ流行りなのかな?

本書はシリーズの第一弾だそうで、次作も楽しみ。
イライアの生い立ちにかかわる事件も起こるんだろうな。
ちなみに、この著者は男女二人組みの覆面作家だそうだ。道理で、マルコもイライアもどちらも魅力的に描かれているわけだ。

 



 

 

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