週末の読書会の課題本は、『笑う警官』の新訳バージョンとの指定つき。
なので、新たに購入し久しぶりで読んでみた。
冬のある日、ストックホルムのはずれの荷役場の鉄柵に、市バスが突っ込む。
巡回中の警官二人がその二階建てバスの中をみると、そこは死体の山。まだ息のある乗客も瀕死の状態だった。
マルティン・ベック警部が現場に駆けつけると、乗客の中には彼の部下の若手刑事のステンストルムの姿が。
彼はこの日は非番だったのにもかかわらず、同棲していた女性には仕事だといって出かけていた。
なぜステンストラムはこのバスに乗っていたのか。
なぜ、乗客たちは全員銃殺されなければならなかったのか?
警察小説の主人公といえば、「家庭崩壊したもっさりした男」というのがテンプレ化しているが、その元祖がマルティン・ベックだ。
この小説の面白さは、リアリズムとチームプレイだろう。
whyという謎も魅力だが、それを皆で力をあわせて解くというその地道な過程がいい。本当に地味だけど。
マルティン・ベックは良い刑事ではあるが、スーパースターではなくそういうふうにも描かれてはいない。事件解決には、相棒のコルベリをはじめ、チームのメンバーや、また地方警官の足で稼いだ努力が大いに寄与している。
『アベンジャーズ』は、はっきりいってアイアンマンが一人いれば何とかなった感じでもあるが、マルティン・ベックは、ベック一人ではどうにもならない。
チームのメンバーは、どこにでもいるような普通の人間で、捜査手法も地道極まりない。
サクサク進んでいくのを好む読者からすれば、展開がもたついていると感じるかも。実際、殆ど進展がないシーンは続き、糸口を掴むのも殆ど最後の最後になってからだ。
だが、その「もたつき」こそがマルティン・ベックシリーズの魅力ともいえる。
警官たちの人知れない地道な努力を引き立てるのは、やはり時代背景だろう。
舞台となっている1960年代後半は、スウェーデンでも大々的な反ベトナム戦争、反米のデモが吹き荒れている。
構図的には「警官VSデモ隊」で、その様子は本書の冒頭のとおり。アメリカ大使館を守るため、市民からなるデモ隊の人々の血を流したということで、警官は信頼を失っていた最中だ。
まだ胸のふくらみもないような13歳の少女が屈強な警官に乱暴にねじふせられるシーンが印象的だ。
ちなみに、このシーンで少女が持っていたプラカードは、旧訳では「お○んこをやりつづけて、どんどん警官を増やせばいい!」だったが、
新訳では「警官たちをやっちまえ!(ファック)」である。
また北欧ミステリといえば、「暗くて陰惨、そして絶望」と相場が決まっている。だが、『笑う警官』にはアイロニカルな笑いがある。
どこまでが狙ったものなのかはわからないが、例えばベックのチームメンバー評はこんな具合だ。
「コルベリ。傲慢な態度に肚の突き出た肥満体だ。ストイックなメランダーは、その外見から無愛想で退屈そうな男でも優勝な警官になれると人に思わせるのは無理だろう。鼻の赤い、どこからみても平凡な男ルン。グンヴァルト・ラーソンは圧倒的な体躯で人に恐怖感を与え、冷たい青い目で人を睨みつけ得意がっている。」
また忘れてはいけないのが、女性の描き方。時代的なものもあるのだろうが、割と散々な扱いだ。
『ロゼアンナ』のロゼアンナも同様だが、『笑う警官』のテレサも病的な色情狂として描かれている。そのため被害者となるのだが、結果としてそのことで罰されているかのような印象すら受けてしまう。
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連日の人民元切り下げ(変動相場制?)、持ち株はその反動を喰らってはおられませんか?
自分は喰らいました・・ふう。
まぁ・・あの国はいろいろやらかしてくれます。
<英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊>を、
参考に読書中ですが、
本作『笑う警官』もリストに入っておりますよ。
現在そのリストから『わたしは英国王に給仕した』フラバルを遅く読んでおりますが(ブームの去ったあと)、いいですな・・なかなかです。
『異邦人』のうすい一冊もいまさらながら再読しましたが、このトシで読んでもやはり名作でありました。
・・以上短く。
読書会のレポート期待しております!
株も読書もリスク回避・・ではまた!
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naoさん、こんにちは。
> 連日の人民元切り下げ(変動相場制?)、持ち株はその反動を喰らってはおられませんか?
影響大有りですよ!
でも、これまでが低迷しすぎていた株だったので、これくらいですんでよかったかな。
金融株は、大部分処分しているので…
しかし、中国もいい加減にしてほしいですね。アベちゃんは政権もやばそうだし、何か打ち出してくれるといいのですが。
『わたしは英国王に給仕した』いいですね!
私も読みたいけど、もう少し涼しくなってからですかね。
今はボケた夏でも楽しめるB級もののほうが気分かも。
『笑う警官』も悪くはないけど、どうも夏向きじゃないんだよなぁ…