今後の展開が楽しみなスペイン・ミステリ「花嫁殺し」

完全匿名作家によるスペイン・ミステリで、舞台はマドリード。
マドリード、またいつか行きたいなぁ〜


花嫁殺し (ハーパーBOOKS)

物語は、マドリードの公園で若い女性の遺体が発見されるところから始まる。被害者は結婚を目前に控えていたロマの娘スサナ。
彼女は頭蓋に穴を開けられそこから入れられた蛆虫に脳を食われて殺害されていた。
実は7年前、スサナの姉も同様やり方で殺害されたが、犯人は逮捕され服役中だった。
すわ模倣犯か、無実の人間を誤認逮捕してしまったのか。
スペイン警察としては、マスコミや世論が騒ぎ出す前に早急に事件を解決しなくてはならない。
そこで警察幹部直属の特殊分析班(BAC)が担当することになるのだが・・・

特殊分析班(BAC)は、クリミナル・マインドでいうところのBAU?
そこまで行動分析に特化している風でもないが、所轄とはまた違った特殊な立ち位置にある。

やはり気質のせいか、イタリアン・ミステリのマウリツィオ・デ・ジョバンニの「P分署捜査班のシリーズ」に雰囲気が似ている。猟奇的な事件に、個性的なチームの面々など特徴も共通。
設定的には、ルメートルの「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ」の方が近いが、そこまでの暗さや悲壮感はなく、フレンチとイタリアンの中間的な印象かな。

扱われているテーマ自体は「カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ」に負けず劣らずだが、主役の特殊分析班を率いるアラフィフのエレナ・ブランコのサバサバキャラに救われてるのかも。
上流階級に属する彼女は、マヨール広場に面する豪華な部屋に住み、カラオケとグラッパ(イタリアの蒸留酒)を愛し、旧ソ連時代の骨董品の車を乗り回す。破天荒で奔放だが、仕事には厳格。

だが、エレナ自身、暗い過去を抱えている。
その過去の出来事は中盤あたりで明かされ、劇的な展開で次作へと繋がっていくのだが、かなりエグくなりそう・・・
まあ、脳を蛆虫に食わせるというのも相当なものだけども。

チラリとのぞく階級社会に、ロマと呼ばれる人々の立ち位置も興味深い。イタリアン・ノワール「Subbra 暗黒街」でも描かれていたが、マドリードにおいても裏社会の一角を牛耳っている。

もう一つ着目すべきは、うまく機能しているチームに異分子が加わることだろうか。
「花嫁殺し」をBACが捜査することになり、梯子を外された所轄の刑事サラテだ。納得がいかず食い下がるサラテをエレナは気に入りBACに加えるが、不協和音をもたらす。
しかも、サラテには7年前の逮捕には誤りがなかったことを信じたい理由がある。

ひっかき回し役であると同時に、エレナともできたりして、今後の彼の役割も重要度が増しそうな予感。

いずれにしろ、次作が楽しみ。

 

 

 

 

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