ハミルトンの新シリーズ第二弾「ニック・メイソンの脱出への道」

スティーヴ・ハミルトンの新シリーズ「ニック・メイソンの第二の人生」の続編。
最近シリーズものばかり読んでる気もするが、これは欠かせないのでもう仕方ない。

 

ニック・メイソンの第二の人生 (角川文庫)

ニック・メイソンの脱出への道 (角川文庫)

前作では、友人をかばい25年の刑に服していたニック・メイソンが、おなじシカゴの刑務所に収容されていたギャングのボス、ダライアス・コールとの取引によって自由を手にいれる。ニックには4歳のときに別れたきりの娘と元妻がおり、なんとしてでも娘に会いたかったのだ。
彼の残りの刑期は20年。メイソンを出所させるかわりに、その20年もの間コールのいうことをなんでもきくという「契約」だった。今回はそのダライアス・コールが再審請求を行い、出所を図ろうとしていた。ニックはコールから裁判に不都合な検察側の重要証人の暗殺を命令される。
一方、家族をはじめ自分に関わる人間を危険にさらすことに耐えられなくなったニックは、コールの支配から逃れるための策を練り始めるのだが・・・

前作までは、計らずしてギャングの暗殺者になってしまった自分への戸惑いや、家族への思いなどなど、主人公のナイーブさも見られたが今作では少し様相が変わる。
訳者もニックをして、作者の他のシリーズや「解錠師」のマイクル同様、「巻き込まれ型」の主人公だったと指摘しているが、そもそも自ら望んで暗殺者になったわけでもなく、すべては娘と元妻の身の安全のため。否応ない受動的事情からだ。
が、本書を機にニックは真の意味で暗殺者になったのかもしれない。

ところで暗殺者といえば「暗殺者グレイマン」だが、もしかして殺しの腕も「グレイマン」越えた?(笑)

それはさておき、小説自体の性格も暴力性とハードさを増している。その原動力は「怒り」だ。愛する者を脅かすことに対する怒り。
よく、人間は自分のためにはそれほど頑張ることはできないが、誰かのためになら頑張ることができるというが、それを地でいく展開。まあ、さすがです。
グレイマンに足りないのはこの理由付けだよなぁ…

だが、失ってしまうものもある。彼は「仕事」の際、人間的な感情をシャットダウンするのだが、これまでは終わった時、我にかえることで「自分が何をしてしまったのか」ということに苦しんできた。けれどももうその感情は襲ってこなくなるのだ。

メイソンはどうなる?とわくわくしつつ読んだが、なんとまさかまさかの展開が待っていた(笑)

そんな予測不能なストーリーもさることながら、登場人物の造形もさすがはハミルトン。
私の今回のお気に入りは、ニックの前任者のショーン・バークだ。
北アイルランド生まれで痩身体躯の赤毛。見てくれは見くびってくれといわんばかりだが、家ネコの皮をかぶったライオンだ。
そのバークのセリフに「アイルランド人に使っちゃいけない言葉は、ひとつはイギリス人。もうひとつは裏切り者だ」というのがある。
この本の少し前に「北アイルランド現代史」「コールド・コールド・グラウンド」を読んだのだが、まあ、この一言がいかに北アイルランドを表していることか…

 

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