ニック・メイソンの第二の人生 / スティーヴ・ハミルトン

九州は大変な雨みたいだけど、関東はどうやら空梅雨らしい。ムシムシ〜。

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そんななか朝から病院にいくが、病院というのはとにかく待たされるところだ。「ニック・メイソンの第二の人生」を読み終わってしまったですよ(笑)
 
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早期釈放なしの25年の刑で服役中のニック・メイソンは、独自のルールに従い、刑務所内で生きのびていた。5年経ったある日、ニックは、この重警備刑務所に居ながらにしてシカゴを牛耳っている大ボスコールに突然呼び出される。
コールはニックに刑務所から出してやるかわりに、この先の20年自分のために働くという取引を持ちかけるのだった。
 
娘に会いたいがためニックはその申し出を受け入れ、晴れて釈放される。妻は別の男と再婚しており、ニックが逮捕された当時4歳だった娘はもう9歳だ。
 
コールはニックにシカゴのタウンハウスと、高級レストランの副支配人の肩書きを用意していた。本当の仕事は”携帯が鳴る”まではない。
ただし、ひとたび携帯が鳴れば、どんなことであれ指示通りに実行しなければならない。
そして、その電話の指示は、初っ端からニックのルールに反するものだった。
 
かくして、彼の第二の人生は始まったが…
 
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この本もエルロイをペンディングしたくて買ったのだが、読みやすくて一気呵成。
 
ところで、驚いたことにハミルトンはIBM社員と作家の二足の草鞋の人らしい。昼間はサラリーマン生活をして、夜、原稿に向かうらしいのだが、そんな二つの顔を持つ彼が「第二の人生」というタイトルの本を書いたというのもまた興深いではないか。
 
ハミルトンといえば「解錠師」。主人公の設定も何もかもが異なるが、解錠師のマイク同様、運命に流される主人公というのは応援したくなるものだ。
ニックは自分を犠牲にして友人を庇ったり、保護犬マックスを引きとろうとしたりと実は結構いい奴だったりするのだ。悪人ではないのに、逆に人の良さが災いして道を踏み誤ってしまうニックに魅せられる。
 
ちょうど先日テレビをみていたら、鳩山邦夫氏の死去のニュースが飛び込んできた。彼は周知の通り育ちがよく地頭も抜群に良く、強面なイメージとは裏腹に朗らかで誰からも好かれる人だったという。しかし皮肉なことに、その才能と恵まれた環境を生かせずついぞ総理大臣の椅子に座ることはなかった。彼もまた抗えない流れにのまれてしまった感が拭えない。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 
タイムリーさもあるが、この「ニック・メイソン」を読んでいて、運命の流れみたいなものを意識せずにはいられなかった。
ただし、ニックの場合は鳩山氏とは180度異なり、シカゴの貧しい地区に生まれ育ちだが。
 
解説の方は本書に漂うそれを「感傷的」と表現していたが、確かにセンチメンタルにさせる。また、クルーガーがいうようにこの小説は弾丸のように読者を撃ち抜きもする。しかしどこか感傷漂う犯罪小説なのである。
 
ニックの闘いはまだ続いていく。これはどうやらシリーズの第一弾らしいのだ。
 
 
 
 

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