フィクション

謀略監獄 / ヘレン・ギルトロウ

2016-02-15

昨日はバレンタイン。私も義理チョコのアソートもらったが、甘いチョコとは裏腹に、本書は苦め渋めのハードボイルドなのだ。
しかも著者は女性!女性が描くハードボイルドって、「それ、ハードじゃないから」というのが多いのだが、久々に大当たりかもしれない。

“緊張を読ませる”というこの感じはどうだろう。そして、同時に感傷的でもあるのだ。

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主人公はシャーロット・オールトン。ロンドン港湾ドックランズの眺めのいい高層マンションに住み、オペラやパーティの席では好感度の高い同伴者だ。

だが彼女には仕事上の名前が別にあった。ジョージス・マイリーの宿敵と同じ「カーラ」である。彼女はかつて闇社会でIDや身分の偽造を専門としていたのだ。そして、そんな過去が彼女を追いすがる。

かつてカーラに逃がしてもらった過去がある特殊部隊あがりの殺し屋ジョハンセンが会いにきたのだ。彼はカーラに、<プログラム>と呼ばれる監獄へ潜入させてくれるよう依頼する。それも囚人として。彼は<プログラム>内での殺人を請け負ったのだった。

刑務所不足と予算の削減に悩む政府は、郊外の荒廃地に犯罪者自身が自主管理する地域を作った。壮大な実験、それが<プログラム>だ。
内部は恐怖に支配されている。セキュリティは万全、一旦入るとネズミ一匹外にでることができない。
<プログラム>を支配しているのは、ジョン・クィランだ。プロの犯罪者でギャングの親玉であり、ジョハンセンが姿を消さなければならなくなった理由でもあった。過去の件でクィランはジョハンセンを殺したがっていた。

カーラはすでに引退しておりジョハンセンに借りもなかったが、依頼を引き受けることにする。彼女がやらなければ他の誰かがやるだろうが、その誰かは彼女ほど彼を気遣わないだろうから。

かくしてジョハンセンはカーラの手配で<プログラム>の潜入に成功する。
ターゲットは、キャサリン・ギャラガーという女性医師。だが、カーラが調べても、被収監者のリストにその名はない。

なぜ彼女はそこに収監されているのか?
どんな罪を犯したのか?依頼人は一体誰なのか・・・

『謀略監獄』というタイトルから、一見、難攻不落の脱出ものかと思いきや、実はラブストーリーに近い。

一旦は引退したシャーロットを引き戻したのは、ジョハンセンへの想いだったが、二人の関係は完全なプラトニック。いや、プラトニックというより、もっと淡い感情なのである。それが終始緊張を強いる本書にあって、美しい存在感を放っている。
人は皆自分のことは自分で決めていると思い、その決定はすべて意識的なものだと思っているが、気がついたときはもう後戻りできなくなっていることも往々にしてある。その「どうしようもなさ」がもたらす切なさが本書の良さだろう。

激しい暴力シーンが多く暗めのトーンなので、好みは割れるかもしれない。本書は著者のデビュー作だというが、CWAを受賞してもおかしくない出来だと思う。

 

 

 

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