一度は乗ってみたい豪華客船の秘密とは・・・?ドイツミステリ界の鬼才フィツェックの「乗客ナンバー23の消失」

船旅が流行っている。
昔は一部の限られた人のためのものだったが、最近はカジュアルなものも増え、家族で楽しめるものも多くある。
とはいえ、人生一度はラグジャリークラスといわれる豪華客船の旅をしてみたい。


上の写真は横浜港に立ち寄った飛鳥Ⅱ。

本書はそんな豪華クルーズ船を舞台にしたミステリー。
しかもフィツェックだもの、面白くないわけがない。
「アイ・コレクター」も続編を楽しみにしていたのに、なぜ日本語版がでなかったのか…!

主人公は囮捜査官のマルティン。
5年前、彼の妻と息子は航海中のクルーズ船から姿を消した。結局、妻が息子を道連れに自殺したということで片付いたが、そのことでマルティンは傷つき、精神を病んでしまっている。以来、狂ったように危険な仕事をこなしてきた。
そんな彼は、あるとき老婦人から「あなたの妻子はまだ生きている可能性がある」という電話を受ける。彼女はサザンプトンからニューヨークへむかう太平洋横断中の豪華客船「海のスルタン」のスイートで暮らしており、自分に会いにしてほしいという。
その船こそがマルティンが妻子をなくした船だった。
老婦人曰く、2ヶ月前に行方不明になった女の子アヌークが再び姿を現し、彼女がマルティンの息子ティムのぬいぐるみを持っていたというのだ。

航海中のクルーズ船で乗客が消えるのは実はよくあることらしい。
自殺するには身をなげるだけでいい。遺体が見つかることはない。毎年平均23人もの乗客が姿を消しており、彼らは海に身を投げたとして処理されるという。
タイトルにもなっている「乗客ナンバー23」とは、クルーズ船の行方不明者のことだ。
マルティンの妻子とアヌークとその母親。繰り返されるクルーズ船上での母と子の失踪には、何が隠されているのか・・・


乗客ナンバー23の消失

「あ、そっちだったのね!」的マジックは、さすがはフィツェック。
一筋縄でいくわけがないと思って読んでもその斜め上をいく。
好奇心旺盛なお金持ちの老婦人や、船長、クルーズ船を「仕事場」にしているコソ泥など、登場人物のキャラもそれぞれに濃くていいし、「ラジオ・キラー」とほんのり世界観がつながるのもフィツェック・ファンには嬉しい。

某女装芸人の番組でも、クィーン・エリザベスのスイートに住んでいる女性が紹介されていたが、専属のバトラーに傅かれて豪華なスイートで暮らす階層の人もいれば、船底には決して乗客に目に触れることのない時給2ドルで働く従業員もいる。
憧れの豪華クルーズ船だが、物事は決して見た目通りではないなぁとも思ってしまった。
まぁ、この世の縮図といえばそうなのかもしれないけども。

最後の最後、明らかにされる豪華客船の秘密は、やっぱり実際あるのだろうなぁという感じ。というかいかにもありそう。

 

 

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