まるで答えのない白熱教室のよう…「ルポ プーチンの戦争」

日々、ロシアのウクライナ侵攻の戦況のニュースを見つつ読んだ。

本自体は最近の新刊本ではなく、2018年刊行のもの。つまり、取り上げているのは今回の侵攻ではなく、2014年のクリミア侵攻に焦点を当てている。どうしてそれが起こったのか。プーチンはなぜウクライナを狙ったのか…
毎日新聞記者によるルポタージュである。

 プーチンの戦争

 

サブタイトルは、「皇帝はなぜウクライナを狙ったのか」だが、答えはいくつもあってどれも絶対的な気はしなかった。
なんかやっぱり古き良きソ連時代(プーチンにとっての)への回帰を目指す、前時代的野心のような気がするなぁ…

読んでいて不思議に思ったのは、今回は大騒ぎになっているけれど、2014年のクリミア侵攻はどうして今のような騒ぎにならなかったのだろうということだった。
状況としては同じだが、決定的な差は「ウクライナが抵抗したか否か」と「欧米の関与の仕方」か。
クリミア侵攻時は、当時のウクライナ政府は降伏し、無血で終わっている。仲裁にはドイツとフランスというEUの大国が入った(ミンスク合意)

一旦停戦の協定は結ばれたものの、ウクライナはそもそも親露派と親欧米派(親ウクライナ)とで、激しい内戦状態にあったらしい。日本国内のニュースではなぜかそのことにはほとんど触れられていないが。
ニュース(ニュースショー?)を見ると、突如ロシアがなんの落ち度もないウクライナに侵攻をはじめたので、欧米の支援を経て必死に抵抗をしているとばかり報じていることに、ある種異常な違和感を感じてしまう。
とにかく最近のニュースについて思うのは、恣意性が介入しているのではないかということだ。

「次はきっと日本に侵攻してくるに違いない!この機会にロシアをコテンパンにやっつけろ!」という意見がネット上に溢れているのはこのせいだろうなぁ。

確かにこの不安定な世界情勢で、核も軍事力も持たないのは不安だし、できるなら備えておくべきだと思うが、戦争当事者になるほど愚かなことはない。

私は「プーチンは悪いが、ウクライナ政府サイドも善じゃない」と思うのよね。
アマゾンレビューなどでは「やっぱりロシアが悪いのだ」と断定しているかたもいたが、そうかなぁ。
少しでも悪の要素が少ない方が正義なのか。どっちもどっちじゃないか。

クリミアの一方的併合や、ドネツク、ルンガスクの独立承認等、プーチンのやり方は確かに強引でインチキだ。だが、親露派住民というだけで、自らの国民に銃をむけたウクライナ政府はどうなのだろう?親露派が多い地域というだけで、その地域の年金を含む全ての社会保障を停止したやり方にも全く感心しない。
当該地域のより一層の中央政府に対する反発を招いただけだろう。

そして、そこをプーチンにつけ込まれた。
思うに、いかに「皇帝」と揶揄されるほどの独裁者でも、国民の支持なくしてそうそう軍事侵攻などできはしない。なんだかんだ言って国民の支持ありきの皇帝なのだ。
軍隊を動かすには、国民がそれをやってしかるべきと信じるだけの「大義名分」が必要だ。
ウクライナ政府がNATO加盟をチラつかせたことが今回のウクライナ侵攻の原因と言われるが、そもそも進行形で内戦状態にある国が加盟できるなどとロシア側も思ってはなかっただろう。EU加盟も然り。
親露派住民に銃を向けてきたことが、その「大義名分」の餌となったのではないか。それを基に、情報遮断されたロシア国民を信じさせるに足るファンタジーを作りあげた結果が今回の戦争なのではないか。

ルポの中で著者がインタビューしたウクライナの人々は、当時、皆一様に、「とにかく平和を望んでいる」と言ってた。
親露、親ウクライナの対立構造はずっと政治利用されてきたが、一般市民にとって大事なのは、「平和で安定した生活が送れること」そのことに尽きる。

今回のウクライナ侵攻に関しては、ロシアが撤退するのならそれが一番いい。だが狂人にそんな理屈は通用しないし、経済制裁の効果も限定的らしい。
クリミア侵攻の時のように大国が間に入り仲裁をすれば被害も少なかっただろうが、今回は逆に煽ってしまっている。
では、プーチン一人暗殺すれば全て解決かというほど、ことは甘くはない。あれよりもっと過激な人物もいるらしいし、より深刻な対立に発展するだけだろう。
隣国に時代遅れの価値観に囚われた独裁者がいる場合に大事なのは、悪戯に煽ったり、かまったりしないという対処の仕方なのではないか。
飢えた熊を挑発していいことなど一つもない。
ゼレンスキーは自分の支持率を回復させるために利用したかった節もあるし、米国が再三忠告していた通り、こうなったのは確定路線ではあったが。

元大阪府知事の橋下氏がいうように、ウクライナ側が降伏すれば、いま生きているウクライナの人の命は助かるし、国土もこれ以上焼かれずに済む。
でもそうすれば、世界は暴力による現状変更を容認することになってしまう。それを狙っている国は、ロシア以外にも多くある。

前者は人命優先で、後者は正義をより優先する。命と正義をどう考えるか。何が正しいのかは私にはわからないけれど…

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