「教育超格差大国」アメリカ / 津山恵子

ワイドショーを見ていたら、元華族の家柄の「超セレブ大学生」を紹介していた。その彼の持ち物とライフスタイルのすごいこと!
 
ほぉぉおおおお〜としか言えない…
 
お金はあるとこにはあるのである。
そして、今の時代は、恵まれた環境を”誰も真似のできない個性”としてウリにし、お金を稼ぐことができる。
 
 
s-education.jpg 
そんな雲の上の人のことはさておき、我々のような庶民はどうすればいいのか。
親の世代と同じか、それよりもいい生活をするためには、いい大学を出て、いい職に就くことだと言われる。たぶん今でも。
庶民には、結局それしか術はないからだ。だから、親は多少無理をしてでも子供の教育に高い対価を払う。
 
「東大生の親が概して高収入である」というのは言わずと知れた真理だ。東大に入るためには、それなりのコストがかかるからである。また、高収入な親ほど子供の教育に熱心だ。
 
では、アメリカはどうだろう。本書は、そのタイトルのとおりずばりアメリカにおける教育格差の事情についての本なのである。
 
「超格差大国」と銘打っているだけあって、富めるものと貧しいものの教育格差は、日本の比ではない。均一化している日本の教育に比べ、アメリカでは「最高の教育」を受けることができる。子供に相応の学力があり、親が学費が賄えるのであれば。ちなみにハーバード大学の学部の年間学費は700万以上だ。
 
マイノリティや移民など貧困層の多い地域での公立高校は、往々にしてレベルも低ければ卒業率も低いという。女の子は在学中に望まぬ妊娠をし、シングルマザーとなることも多い。かくして、貧困は子供へと受け継がれることになる。
 
「親の所得と子供の学力の相関関係」は、日本とは比べものにならないレベルで確固たる事実であり、「負の連鎖」とともにそれとは逆に顕著な「プラスの連鎖」も存在する。だから、階層は固定化されてしまう。
 
さらにひどいことに、キャッチにもあるように、「貧困層の子供は脳まで小さい」のだ。
貧困層の子供の脳は、富裕層の子供の脳よりも、大きさにして6パーセントも小さいのだそうだ。
その大部分は環境によるものなのだろうが、少なからず遺伝子が蓄積された結果とも言えるのかもしれない。
 

 

 
国が援助することで、全ての子供に等しく教育の機会を!というのは、素晴らしいことだと思うが、それで解決できるほどこの教育格差の問題は単純ではない。
 
ハーバード大学などの超エリート校は選ばれたものが集まるだけに、「競争」もまた熾烈だ。1日に13時間も勉強しなければならないし、そのストレスはウォール街のトレーダー並みだとも言われる。誰もが「頑張りさえすれば大丈夫」なのではない。最高の教育機関は選ばれしもののためにある。
仮にチャンスが与えられても、普通の人はもちろんのこと、脳の面積の小さい貧困層の子供にはほとんど縁のない場所だ。
 
まさに『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』であるためか、筆者は追求していないが、格差問題は単に機会だけの問題とは言えないのかもしれないなとも思ってしまった。
著者の津山氏はこういう意図でこの本を書いたのではないだろうが。
 
ちなみに、『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』というのは、橘玲氏の最新作のタイトルである。この残酷な本は、遺伝学、脳科学の最新知見から、ずばり「努力は遺伝に勝てない」と言い切っている
 
また、オハイオ大学のヴィッター名誉教授は長年「誰もが大学に行くことに反対してきた」という。
大学の学位が必要な仕事の数に比べれば、大卒が多すぎるからだ。しかも、対価に見合わない高額な学費のために、卒業後は学生ローンの返済に追われることになる。
 
30年位前の日本の大学進学率は確か13%程度だったが、今は50%を超えている。子供の数は減っているのに、二人に一人は大学へ進学するのだ。アメリカと同じことが起きるのも当然だろう。
 
「親よりも一段よい教育を受ける」以外の選択肢があってもいいのではないかと思うが、そう簡単にはいかないのだろうなぁ。
 
      

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。