『探偵は壊れた街で』読書会

この日の読書会は全部で8名。

場所は横浜駅からほど近いいつものお店。
実はここカラオケ屋。すっかりお得意様(笑)

ちなみにカラオケは一度もやったことない。お店の人たちは「この人たち、何やってるのかしら」と不思議に思っているだろう。ええ、不思議集団なのです。

 

課題本は、先だっての「翻訳ミステリー大賞コンベンション」のビブリオバトルで東京創元社さんが推薦されていた『探偵は壊れた街で』。

 

今回の読書会開催に際しては、東京創元社の担当編集の佐々木さんよりこんなメッセージをいただいた。

ヘンテコな作品ですし読む人を選ぶ面もあるので、意見が紛糾すると思います。 おもしろかった! という方はわたしと好みが合うと思いますので、 今後も担当書をチェックしていただけますとうれしいです(笑)

ありがとうございました!

本書はハリケーン・カトリーナのもたらした惨事の復興途中のニューオリンズの街を舞台に、女探偵のクレア・デウィットが予知夢や易占いなどの独自のスピリチュアルな手法を用いて、検事補ヴィク失踪の真相を探るというストーリー。

◆ 採点

今回の平均点は、10点満点中、5.5点

 予想はしていたが、男性陣には概して不評
 他方、女性陣はこういうのは割と好きという人が多かった。

 

 

◆良かった点

*著者がテレビの脚本家をしていたせいか、映像的で読みやすい
*これくらいのオカルト(?)なら受け入れられる
*SFのように設定を受け入れてしまえば、楽しめる

*ありがちな若くて綺麗な女の子を主人公にせず、個性を持たせたのは良いと思う。 *オリジナリティがある
*ニューオリンズという街の独自性にスピリチュアルな雰囲気があっている
*ハードボイルドな語りとスピリチュアルな主人公のキャラとのズレが面白い効果

*全体的にディテールが凝っていて女性的
*シレットの娘とトレーシーの失踪の謎があとをひく(続編も必ず読むと思う)

*装丁が魅力的

 

 

◆悪かった点

*ハードボイルドではない


*クレアは探偵というより占い師か呪術師
*主人公に魅力を感じない
(師匠のコンスタンスは魅力的に感じたが・・・)


*事件の真相がありきたり
*性の部分がでてこないなと思っていたら、案の定小児性愛ものだった
*アメリカの作品は小児性愛者ものがやたらと多い

*シレットの御託が大したことない
*小技をきかせようと多くの布石を打っているが収拾できていない

 

 もっとも多かった意見が

「これ、ハードボイルドじゃないよね・・・」

とことで、コンベンションのビブリオでは「探偵にできるのは、謎を解決し前に進むことだけだ」というフレーズにとても感銘を受けたとプレゼンされていたが、この部分を探すのは大変だった( 苦笑)なぜなら、この言葉と物語自体の印象が違いすぎたから。 

ハードボイルドは一言でいえば「男のやせ我慢の美学」だが、主人公のクレアはそのの対局にある。
また、探偵といものの概念が一般のそれから乖離しすぎている。クレアは、探偵というよりも占い師か呪術師なのだ。

著者はシャーロックを意識しているらしいが、シャーロック的の理詰め感は乏しく、推測には根拠がない。

曰く、

シャーロックだって、お酒も麻薬もやっているし、彼はクレアを気にいると思う。
ホームズやエドガー・アラン・ポーのデュパン、フィリップ・マーロウは、彼女のやり方には感心しないと思うけれど、彼女が出す結果には満足してくれることでしょう。


そうかな???
 もしもあなたが、失踪人探しを探偵に依頼するとして、シャーロック、デュパン、マーロウと本書のクレアなら、誰に依頼したいだろうか?

 ヒロインものというのは難しいのだ。

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。