新春恒例エドガー賞作品『ボトムズ』読書会

横浜読書会の新年一発目の読書会は、その前年のエドガー賞受賞作と決まっている(た)
2015年のエドガーは、S・キングの「Mr. Mercedes」なのだが、しかし日本語版がまだ発売されていないのだ。かくして、かねてから熱烈なオファーがあった、ジョー・R・ランズデールの『ボトムズ 』が課題本に決まった。

 

場所は横浜駅近くのいつものお店。ここもかなりな常連になってしまったが。

まずは、あけおめのカンパ〜イ!
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※ 以下、ネタバレあります。

 

 

 

 

評価は高いだろうとは予想していたが、平均点は、7.57点!
中には、10点満点という人も!
最も多かったのが7点台で、最低点は6点だった。

 

個々の感想では、
* ランズデール自身が善良な人だと伝わってくる。性根が温かい。
* 非の打ち所がないほど完璧な物語(再読しても完璧だった)
* 読後感が良い
* エピローグも良かった
* 30年当時のテキサス東部の情景が鮮やかで映像的
* トビー(主人公の犬)が死ななくてよかった
* 父子の物語のみならず、父親を一人の人間として弱い部分も描かれている
* 主人公ハリーは子供らしい子供として描かれておりが、いやらしさがない
* おばあちゃんが登場してから物語のテンポがよくなった
* 老齢になった主人公が回想するという語りの形によって、人種差別の残酷さが中和されいる
* 人種差別やセクシズムの描き方が教科書的で安心して読めた
* 差別を白黒のみで描いていないのが良い


「トビー(主人公の犬)が死ななくてよかった」という人多数!
横浜読書会は動物好きが多いのだ。

ところでトビーはリス狩りが得意な犬だが、リスをどうするのか?
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当然、食べるのです!
いくら可愛くても、ハリーたちにとっては貴重なタンパク源なのだ。

人種差別に反発するハリーの父親に弱い部分を持たせることで、よりリアルさをもたらしている。
彼自身、黒人差別に反対の意を持ちながらも、自分の心にもそういった気持ちがなくもないことを認めているのだ。

なっちゃんさんのいうように、例えばレットも白人に見えて実は黒人の血が入っていたり、彼の死も自殺と殺人双方の可能性を残したままにしていたりと、物語自体も「白か黒か」で構成されていないのも、本書の特筆すべき点だろう。

一同、絶賛の嵐だったが、その反面で下記のようなマイナス要素も挙げられた。
* ミステリとしてはイマイチ
* 盛り上がりに欠ける
* 途中、ダレる
* 否定要素はないが、いまいちノレなかった
* 似たような物語をどこかで読んだことがあり、既視感を覚えた
* ちょっと古い
* 作品は悪くないがランズデールらしい軽妙さに欠ける(賞狙いで書いてみた?)

各人、犯人が誰かは早い段階でわかってしまったようだ。
セシルがハリーの妹トムにご執心なところがアヤシイと思う人もいたし、小さな田舎町にやってきたよそ者だということで目星をつけた人もいた。
そもそも「黒人差別」を強く訴える物語なので、犯人を白人に据えるのはセオリー通りでもある。

盛り上がりに欠ける、ダレるというのは、描写が丁寧なせいだろうか。老人の回想という語りの性質もあって、仕方がないのかも。

「既視感」はわたしも強く感じた。これと同じではないが似たような本を何冊も読んだような気がした。

本書には非はないと思うが、ページをめくるのももどかしく気持ちが逸ることもなかったし、正直再読はキツかった。

 

面白いところでは、
* 解説が下手
* デヴィッド・ボウイの訃報を聞いて、感想がふっとんでしまった

ボウイの訃報にはわたしも驚いた。
死の二日前の写真がネットにでていたのだが、最後の最後まで美しい人だったと思う。

ヴィトンの広告では抜群の存在感を放っていた。
本当に「異星からやってきたスター」だったのかもしれない。
Bowie Louis Vuitton

次回2月は昨年話題のフレンチミステリ、『彼女のいない飛行機 』に決まりました。

 

 

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