犯罪心理捜査官セバスチャン第4弾「少女」。あのセバスチャンが…?

本書は、北欧ミステリの人気シリーズ第4弾。最近のシリーズものは、第1作から読まなくてもいいように描かれていることが多いが、如何せんこれは「読む海外ドラマ」なのだ。最初から読まないことにははじまらない。

ただ、サクサク読めるのでそれほど苦にはならない。それに「特捜部Q 」のシリーズを除けば、北欧ミステリの中では一番面白いかもしれない。重めな社会問題を扱いつつ、キャラクターの軽妙さとユーモアに救われる複合タイプの「特捜部Q 」と違い、こちらは事件そのものより、登場人物のキャラと彼らが織りなすドラマで読ませるタイプ。

 

そして、我らがセバスチャンは、驕慢で自分勝手、おまけにセックス依存症で女性を口説いてベッドに連れ込むのを気晴らしにしている。これで周囲に迷惑が及ばないわけがない。

前作「白骨」のラストでは、ベテラン鑑識係にして元セバスチャンの恋人だったウルスラは彼の女癖のせいで大怪我を負う。
死にかけているウルスラを目の前にして、セバスチャンという男は「ちくしょう、面倒なことになった」と思うようなヤツなのだ。もっとも、さすがにそういう自分のことを恐ろしいと思ったみたいだが。

そんなセバスチャンだが、今回はなんとそんなセバスチャンだけを信用するという「少女」が登場する。
この奇特な「少女」は、母親の留守中に預けられていた叔母宅で一家殺害のシーンに居合わせ、たった一人生き残った事件の目撃者だ。ただ、そのショックのせいで口が聞けなくなっている。その言葉を失った10歳の少女が唯一信頼を寄せるのが、セバスチャンなのだ。
セバスチャンにしてみれば、その子は自分の亡くなった娘サビーネとおのずと重なる・・・

本書のポイントは、セバスチャンが妻と娘を亡くしたトラウマに向き合うことにあるが、読み手はこれまでになくセバスチャンに共感できるはず。

良いところなど一つもないような彼だが、それでもなぜ殺人捜査特別班の面々が文句をいいつつも許容しているのかわかったような気もした。
彼は性格はよくないが、決して悪人ではない。それに人によって態度を変えることもない。誰にとっても平等にあの性格なのだ。そうならば周囲はそれに慣れることができるものだ。犬にドアは開けられても閉められないのと同じで、「仕方ないなぁ」と受け入れざるをえない。

他方、今話題の暴行横綱は、人格者と報道されていたが、それは後援会や協会幹部等一部の人にとってのみの話であって、彼に何の利益ももたらさない人にとってはそうではなかったのかもしれない。もしくは、単に罪を軽く見せるためのキャンペーンだったとか(笑)
そもそも人格者は抵抗できない立場の後輩を鈍器で殴ったりはしない。

話は逸れたが、今後の展開に大きくかかわってきそうなこととして、意外な人物が急激に変化していく。もちろん、悪い方へと。
次作あたりがセバスチャン・シリーズの山場になるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

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