おおおぉぉぉぉぉぉ、これを待っていた!
4月の翻訳ミステリー大賞コンベンションでの版元対抗ビブリオバトルでは、「その犬の歩むところ」をはじめとした話題作に後塵を拝してしまったが、わたしは「ブラック・ウィドウ」に入れたもんね。
いや、「犬」も超よかったけど
ダニエル・シルヴァは面白い!と。
初ダニエル・シルヴァは、「亡者のゲーム」だった。この出版不況の最中、ハーパー・コリンズ・ジャパンが爆誕し、そのときに目玉として出された本だ。ありがたいことにこの出版社は最初から文庫なばかりか、電子版も同時に出してくれる。
この「亡者のゲーム」にハマってしまい、過去出ているものは全て(図書館で借りて)読んだ。
わたしは長い物語は嫌いではないが、代わり映えのないネタで延々と続くシリーズものは概して好きではない。特に刑事ものとか。でもこれは例外。
16作も出た後で今から読めっていうの?と諦めモードのあなた。。。
全然、問題ないです。
なんなら「亡者のゲーム」と「英国のスパイ」もスキップしても大丈夫。良作というのは大抵の場合、そういう風に書かれている。ただ、上記2作は文庫で電子版もあるし、何より面白いので強くオススメする。個人的には「英国のスパイ」のケラーが一番好きなキャラだったりする。
そもそも、ガブリエル・アロンを主人公としたこのイスラエルのスパイのシリーズは、別の版元から日本刊行されてはいた。が、それまでのものは全て単行本。しかも、シリーズ全ては出てない(苦笑)というかそのうちの数冊しか出てない。大人の事情というやつかなぁ???
同じスパイものでも、慣れ親しんだ英国はもちろん、ボーン・アイデンティティやMIPなどでおなじみのCIAとは異なり、イスラエルは日本人にとってあまりに縁遠い。一般読者にとっては食指も動きにくいのだろうから、版元の事情もわからなくもない。
彼女とゴッホの絵を介し面識があったガブリエルは、フランス当局の要請もあり捜査に手を貸すことに。実行犯は、ISISのメンバーで黒衣の未亡人(ブラック・ウィドウ)だった。ブラック・ウィドウとは、生まれ育った西欧諸国を捨ててISISに参加し、戦闘員と結婚して未亡人となる女性たちのことだ。彼女たちは戦闘で死んだ夫の復讐を誓っている。
は、サラディンの身辺を探るため大胆な策に出るが・・・
まず、あんなにもイスラエルは好戦的なのか?ISISは何をルーツとし、爆発的に勢力を拡大したのか。なぜ西欧諸国で次々とテロを起きるのか?その背後ではどのような思惑が交錯し、どのようなことが行われてるのか?
もちろん、小説は小説。再三著者が前置きしているように、これはあくまでフィクションに過ぎないし、ガブリエル・アロンという人物も存在しないのも重々承知だ。しかし、ユダヤ人とイスラエルという国をとりまく背景についてはほぼ事実に即しているといって過言ではないと思う。
伝説のスパイにして美術修復家というガブリエルの特異なキャラも魅力的なのだが、このシリーズの良いところは、冷徹な目で、複雑極まりない各国の事情を解き明かそうとしている点にある。
ルトワックの「戦争にチャンスを与えよ 」で主張される論理に納得し難いのと同様に。理不尽な虐殺を体験したことのない私(たち)日本人はこの種のことに甘いのだろうなぁ。それは幸福なことだけど。
ところで、私は常々ユダヤ人が世界を動かしている説を信望している。トランプ大統領だって、胃パン的にはラストベルトのヒルビリーが主な支持層と言われているが、実はウォール街だって味方している。その実、米国の株価は絶好調。それもこれもイヴァンカさんの夫がユダヤ系だからで、そっちの引きも大きいのだろうなぁと邪推したり。
「ユダヤ人とアラブ人は憎悪と血と犠牲によって結ばれいて、敵対する隣人同士として共存していくしかないという罰を与えられている」とガブリエルを通しシルヴァは言っている。
次に旅行で訪れたいのはイスラエルかアイスランド。
アイスランドは村上春樹の「ラオスにいったい何があるというんですか?」 という紀行文集を読んだからで、イスラエルはずばりダニエル・シルヴァの影響。
夢がかなうのはいつになることやら・・・
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