『笑う警官』読書会

いつものスピンオフではなく、翻訳ミステリーサイトに告知した久しぶりの公募の読書会。
メンバーは見た顔が多いけれど(笑)

人数が多いので、3つのグループに分け読書会スタート!
私の班は年齢も幅広く様々なメンツの8名だった。

全体の平均点は10点満点中、7.7点。

9点に近い8点という人も多かったし、10点満点を付けた人も複数いた。
ちなみに、最も低かった点数は4点。

グループ内の感想としては、
*初版刊行が1968年で、当時大学生だった頃を懐かしく思って読んだ。
*関連のない事件から本筋へという展開は、68年当時としてはかなり斬新。
*謎が謎を呼び、予想を裏切る展開がいい。
*古さを感じない
*普遍的面白さがある
*登場人物の個性が豊か。
*マルティン・ベックが、ヒーローとして描かれていないのが良い。
*地道な捜査過程はリアリティがある。

*展開がもたつく。
*『ロセアンナ』もそうだが色情狂の女性が多すぎる。
*ステンストルムの恋人は良く理解できなかった。

横山秀夫の警察小説との類似を指摘した人もいたが、『87分署シリーズ』とマルティン・ベックシリーズは警察小説の元祖。
イアン・フレミングの007のような「華やかで華麗な」主人公が多かったエンタメ界に、「地味な中年のロートル」の主人公をもたらしたという功績もある。
以来、警察小説の主人公といえば、「中年オヤジ」「冴えない」「家庭は崩壊」の三つは必須条件のようになった。(注:ベックは離婚はしていないものの妻との関係はよろしくない)
ご存知、ヴァランダーはその最たるものだし、インドリダソンの湿地のエーレンデュル捜査官シリーズも然り。『特捜部Q 』のカールもこれに当てはまる。

ベック自身は決してヒーローではなく、手柄はチーム全員によるものだ。
彼自身の見せ場は、最後の最後、犯人が自殺しようとするのを見越して、拳銃から弾丸を抜き取ったということくらい(笑)

つまらなかったという意見はなかったが、新訳版に馴染めなかった人は少なからずいた。
「今回の読書会は新訳版で」という但し書きつきだったので、私も新訳版を購入して読んだが、旧訳のほうが読みやすかった。
というのも、昔の美しい言葉で書かれている高見訳のほうが、より60年代後半という時代を感じられる。

言葉遣いひとつにしても今の我々の話し言葉よりも丁寧だ。例えば「きこしめす」という表現などは、口語ではもうあまり使われていないのではないだろうか。反面、「めくら」や「お○◯こ」など今よりももっと過激な言葉も使われているが。

旧訳版は一旦英訳されたものを訳しており、一方、新訳はスウェーデン版から直接訳しているという。後者のほうが原書に近いのだろうが、そこはチャンドラーの翻訳と同じ。刷り込み効果だ。

清水訳の『長いお別れ』 は、原書をかなり省略しているそうだが、自分の中ではあれがチャンドラー節になっているがため、村上春樹の『ロング・グッドバイ』 は”違う”。マルティン・ベックシリーズも同様。
ただ、初読の人には、新訳版は好評で読みやすかったよう。

ちなみに、謎解きの重要な役割を果たしているルノーCV4は、日本では日野自動車が日野ルノーとして扱っており、タクシーとして多く走っていたのだとか。

そういえば、昔、中野でレトロな初代ブルーバードのタクシーに乗ったことがある。あれから30年以上経っているし、さすがにもう走ってないだろうなぁ。

 

 

二次会は、横浜駅近くのハワイアンなお店で。

次回9月のスピンオフ読書会の課題本は、今話題の『紙の動物園 』だそうです。

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。