ディーヴァー級のエンタメ感!太田愛の「犯罪者」

ここ数年は翻訳ものばかり読んでいたけれど、国内ものも悪くないなぁと思う。しかも安い!
悪くないどころかかなり面白いのもあって、本書「犯罪者」などはその最たるものだ。
なんとなくAmazonのおすすめに引っかかり、サンプルDLして読み始めたのだが、面白くてそのままシリーズと化してる「幻夏」「天上の葦」も一気読みw

これら3作品は、土木作業員の少年の修司、元テレビマンの鑓水、警察官の相馬が活躍するシリーズもので、どれも面白いが、やはり第一作目の「犯罪者」は群を抜いていると思う。
「犯罪者」は修司、「幻夏」は相馬、「天上の葦」は 鑓水の過去が語られているのだが、私のお気に入りは意外に?頭のいい修司なのだ。

 

犯罪者 上 (角川文庫)
犯罪者 下 (角川文庫)

物語は、通り魔事件に幕を開ける。
深大寺駅前広場で、そこにいた男女5人が、突如現れた全身黒づくめのエナメルコートの男に襲われる。商店主風の男性、女子大生、スーツ姿の中年女性、老婦人の4人が殺され、修司一人が脇腹を刺されつつも命を取り留めたのだった。
その後、犯人は駅前のトイレで死体で発見される。薬物乱用による犯行で、過剰摂取で命を落としたと見られた。
ところが、修司は搬送先の病院で奇妙な男に出会う。フレームレスのその男は、修司に「あと十日生き延びろ。そうすれば助かる」と言い残す。不審に思いながらもアパートに戻る修司だったが、再びあの黒づくめの男が現れて・・・

この不可思議な通り魔事件の真相を、殺されかけた修司、修司のケアを命じられた警察官の相馬、相馬の友人で元テレビマン鑓水が解明していくというストーリーなのだが、これがなかなか。
展開もかなり激しく、一筋縄では行かない。
ここでは触れないでおくが、結構重めなテーマも含む。
しかも、三人のキャラ造形もよく、とてもバランスがいい。
小説家としてのデビュー作が本作というのが信じられないほどのエンタメ感だ。
でも、それもそのはずで、著者の太田愛という方は、テレビドラマ業界で長く活躍しており、「相棒」の脚本家としても有名らしい。
エンタメに関してはプロ中のプロというわけなのだ。

作品自体は10年近く前のものだが、それほど違和感なく読めるし、季節もちょうど今時分の桜の季節。
その桜、特にソメイヨシノに関して、作中の登場人物が言っていた言葉が印象的だった。
曰く、「ソメイヨシノはまとめて植えられる樹で、一本一本なんか誰も見やしない。同じ花を一斉に咲かせて一斉に散る。日本人好みなんでしょう。」

シニカルなのはアレだけど、言われてみれば本当だよね。

 

 

 

 

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