フィクション

果鋭 / 黒川博行

2017-03-28

あっという間に3月も下旬。

連日、森友学園問題やら、雪崩事故やら、旅行会社の倒産やらと賑わしい。
 
旅行会社の件は、客からしてみれば詐欺と言われても仕方ない。まだ多少なりとも余力が残っているうちに、会社をたたむという決断ができなかったのだろうか。
 
そうこうしているうちに、楽しみにしていた新刊がでた。
 
奇しくも、この「果鋭」という言葉には、”決断する”という意味があるらしいが、特に企業経営者には、腹をくくって決断することが求められる。そして、もちろんその責任をとることもね。
 
 
さて、黒川博行といえば、建設コンサルタントの二宮と、イケイケ極道の桑原のバディもの「疫病神」シリーズだが、実はもう一つバディものがある。堀口と伊達の元マル暴担刑事コンビのシリーズものである。
本書「果鋭」は、「悪果」「繚乱」に続く第三作目だ。シリーズものといっても、これ単独でも楽しめるように書かれているのでご安心を。
 
ただ、「悪果」「繚乱」も一旦、読み始めたらとまらない。ここ数日ほど、「疫病神」シリーズとこの「堀やん誠やん」シリーズばかり読んで黒川にまみれてしまった。
「日本の作家なんてね〜==」とおっしゃるあなたにこそ、是非この面白さを知ってもらいたい。
なにも「疫病神」から読めとはいわないし、何なら「破門」から読んでもいいと思う。ちなみに「破門」は著者の直木賞受賞作である。たいていの直木賞受賞作は面白くもなんともないが、これは例外中の例外。
どちらのシリーズも新刊がでたばかりだが、もう次が待ち遠しい。
 
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ところで、このシリーズの主役の堀口と相棒の伊達誠一(通称、誠やん)は、大阪府警の元マル暴担の刑事。伊達は柔道の有段者で、身体も大きくみるからに極道面だが、女房にはてんで頭があがらない。
堀口は恐喝がばれて依願退職を余儀なくされ、伊達は伊達で懲戒解雇されている(悪果」)。
マル暴担と極道は見た目も似ているが、やることも似ている。桜の代紋がある分、マル暴担のほうがタチが悪いくらい。塀の向こう側に落ちるのが極道で、こちら側にいるのが刑事だということだけで、本質は同じなのだ。堀やん誠やんも例外ではない。
さて、競売屋に拾われた二人は元マル暴刑事の経験をいかし金になるシノギをしていたが、その矢先に堀口は刺されてしまう(「繚乱」)。
実は「堀やん、誠やん(伊達のこと)」コンビのシリーズは、「繚乱」で終わると思っていた。堀口は死んだと思ってしまったのだ。
極道に腹と尻を刺された堀口は下半身に麻痺が残り、杖がなければ歩けない身体に。女にも逃げられる。
怪我から回復し鬱々とした日々から堀口を救い出してくれたのは、またしても相棒の伊達。競売屋の仕事をしている伊達は、一緒に仕事をしようと誘う。
パチンコホールのオーナー新井が、ゴト師から、玉の計数機の不正改造をネタに脅迫を受けているというのだ。
今度の二人のターゲットは、20兆円にものぼるパチンコ業界。
出玉は遠隔で不正に操作され玉の計数機でも誤魔化しが横行している。だが、業界は積極的に警察OBを採用することで摘発を逃れていた。みかじめ料を払うなら桜の代紋にまさるものはない。

季節ごとの贈り物はもちろん、管轄の署長が退職する際には、少なくない額の退職金まで支払われるというから恐れ入る。「警察の米櫃」と言われる所以である。

このあたりの裏事情は、世の中そういう風になっているのねと、わりとお勉強になる。そりゃ、まあ、こういうシステムだとカジノなんかできないはずだ。
 
裏事情もさることながら、本書の醍醐味はやはり、堀やん誠やんコンビの妙だろう。バディものの例にもれず、堀口と伊達の性格はまるで違うのに、息はぴったり。
「悪果」ではまだそれほどでもなかったが二人の仲は、いまやお互いがなくてはならない存在へと変化した。
女性の私からみれば、こういうのっていいなぁと思うのだ。
なぜってほら、女性同士は色々とある。つい先日も、親友同士だとお互い常に口にしていた方達が、実は全く逆だと知って唖然としたばかりだ。お互い嫌いなら、そもそもが「友人」ですらないのではと思うのだが。
魑魅魍魎の世界すぎる。
また、伊達(誠やん)のキャラに、著者が透けてみえたりするのも楽しい。
「わしは顔は怖いけど身体は弱いねん」
「わしは嫁はんが死ぬほど怖い」
というお決まりのセリフにもニヤリ。
「大阪ばかぼんど ハードボイルド作家のぐうたら日記」というエッセイを読む限り、伊達は黒川さんそのものだ(笑)
本筋には全然関係ないが、「堀やん、わし腹減った。何か喰いにいこ」と、きちんきちんと食事風景が描かれているところも好き。
この二人は日々鮨やら鰻やら贅沢なものばかり食べている。悪事に稼いだお金で贅沢をするというのがなぜか微笑ましい。自分が食いしん坊なせいか、食の光景は見ていて飽きない。
ただし、誠やんは尿酸値に気をつけたほうがいいと思うが。
 
 
 
 
 
 

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