火星の人 / アンディ・ウィアー

私はこの小説大好き!

主人公はマーク・ワトニー、植物学者にしてエンジニアの役割を担う宇宙飛行士
彼はNASAの火星探索アレス3のクルーの一人で、今たった火星にいる。
大規模な砂嵐にみまわれたうえに不幸が重なり、火星に取り残されてしまったのだ。

他のクルーは皆無事にヘルメスで帰還の途にあり、彼らは皆マークが死んだと思っていた。だが、マークは生きていた。

通信機器が壊れてしまったため、NASAとの通信は不可能。幸いだったのはクルーが火星滞在中過ごすためのハブは無事で、その間の6名分の食料と医療品などのサプライが確保されていることだ。

救いはある。NASAにはアレス4の計画があり、5年後には彼らが火星に来るはずだからだ。
さしあたっての問題はまず食料だ。だが幸いなことに、マークは痩せても枯れても植物学者だ。
少量だが地球の土を持参しており、冷蔵のシャガイモは少量だがある。あとは頭脳と同じくらいマーク自身の尻の世話になればいい。
かくして、マークのサバイバル生活は始まるが・・・

 

本書の最大の魅力はマーク・ワトニーという主人公にある。
彼が理系オタク的コメディアンであるがため、この小説は魅力的なのだ。

宇宙飛行士なのだから知的能力はもちろん、問題解決力も素晴らしい。だが、彼の最も有能な資質は、オプティミストでユーモアがあるということだ。
ただのシリアスはサバイバル小説なら、これほど人に愛されたりはしなかっただろう。

事実、本書はまず著者のウェブサイトで公表されたが、それが面白かったため、サイト読者に「ねえ、ねえ、Kindleで出版したら?」と言われて自費出版したところ、あれよあれよという間にベストセラーになったのだとか。そこからちゃんとした版元から紙の本で出版されたという経緯があるという。

物語は、彼が日々のログを綴るという形で進んでいくのだが、その表現も読んでいてまた楽しい。
これから読まれる方の楽しみを削がないためにも、引用したりはしないが、実際、読んでいて噴きだしたりもした。

火星の生活は難題だらけで、日々壁にぶつかり「失敗すれば、ぼくは死ぬ」のだが、その次の瞬間にはルイス船長の私物の70年代コメディにのめり込んだりしている。全く、オタク力は、自らを助く。

ところで、本書はリドリー・スコット監督、マット・デイモン主演で映画化されるそうなのだが、このキャスティングに一抹の不安を抱いてしまうのは私だけなんだろうか?

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。