ドイツ帝国主義が世界を破滅させる / エマニュエル・トッド

ベストセラーになっている「ドイツ帝国が世界を滅ぼす」を読んでみた。

著者は、ドイツやフランス政府への辛辣な意見で知られるフランス人人口学者のエマニュエル・トッド氏。本書は書き下ろしではなく、フランスの雑誌やネットに掲載されたもののインタビュー集である。

 

彼の功績は、人口動態からソ連崩壊と米国衰退を予見したことだという。本書はその新たな「予言」の書らしいのだが「予言の書」というよりは、「呪いの書」というべきか。

とにかく「ドイツ憎し」のオンパレード!

ドイツには少々同情してしまった。
確かに著者のいうように、今や、ユーロはイコール、ドイツというふうに見られている。今は移民問題やら例のVW問題で大変だが、ユーロのなかでは「一人勝ち」といわれても仕方ない。
周辺の安い労働力をうまく使うことで、ドイツ圏を築いてきたのも事実だろう。

だからといって「ドイツが世界を破滅させる」というのは、飛躍しすぎではないかと思ってしまう。単に、私が世界情勢に無知なだけだからなのだろうか。

だが、この論拠に疑問を抱かざるを得なかった。
そもそも著者は経済学者でも政治学者でもない。この本にある暴論の論拠は人口学者としての見解にある。

その人口学者としての論拠とは、「ゲルマン人の家族構成」に所以するドイツ人の特異性とやらなのだ。


ドイツ人は、長男を後継にし、長男の家族を両親と同居させ、他の兄弟姉妹を長男よりも下位に位置付けるという家族システムを持ち、長年それによって培われてきた権威、不平等、規律といったヒエラルキーを、現代の産業社会に伝えてきたという。

これは日本も同様だが、日本が文化的に他者に遠慮するのをよしとしているのに比べ、ドイツにはむき出しの率直さがあるという。
その「率直さ」が行動上の「特性」を生むそうだ。そして、ドイツの持つ「権威主義的文化」は、硬直性とリーダーの不安心理をもたらし、知らないうちに戦争へと突き進んでしまった日本のようになりかねないという。

私には何だかよくわからなかった。
わかったのは、トッド氏は「本当にドイツとドイツ人が嫌い」なのだということだけだった。

また、本書は、「日本向けに」編集されたので、日本に遠慮した物言いをしているのだが、それもなんだかなぁという感じ。

なぜ日本経済新聞が5つ星をつけたのか、私には最後まで全然わからなかった。

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。