ユー・アー・マイン/ サマンサ・ヘイズ

本書は何が何でも「子供を生みたい」という女性の物語である。

最近、友人が卵子を冷凍保存したいと言っていた。なんでも今は200万くらいでできるのだそうだ。

しかし、そもそもその種の医療は特ににほでは、婚姻していることを前提にしている。肝心の卵子はすでに老年化しており、また将来それを使う可能性があってもリスクは高い
いくら高齢出産が可能になったとはいえ、ねえ?
結局、自分のために生きることにするのだそうだ。

舞台はイギリスの中西部バーミンガム。物語は三人の女性の視点で語られる。

一人は出産を目前にしたクローディア。夫ジェームズは海軍の少佐で、任務のため一年の殆どを留守にしている。双子の男の子がいるが、彼らはジェームズの亡き前妻の子供だ。ジェームズは前妻の莫大な遺産を相続したが、クローディアは妊娠後もソーシャルワーカーの仕事を続けている。
そのクローディアの出したベビーシッターの募集広告を見て応募してきたのが、ゾーイだ。30代前半と若いながらも経験は申し分ない。子供たちもすぐになついたことから、クローディアはゾーイを雇うことに決める。
しかし、彼女には何が何でも住み込みのこの仕事を得なければならない事情が隠されていた。
短い休暇がすぎジェームズが任務へと戻っていくと、クローディアは、ゾーイの言動に次第に疑問を抱き始める。

その頃バーミンガムでは、妊婦が腹を切り裂かれ殺されるという事件が起きた。
捜査の担当は、ロレイン・フィッシャーとアダム・スコット警部補。名字は違うが二人は夫婦であり、このロレインこそが物語の三人目の導き手だ。

夫婦仲はうまくいっておらず捜査も噛み合ない。
そこにまた新たな妊婦殺害事件が起こる。

後半には「あっ!」と言わせる仕掛けあり。
クローディアとゾーイの語りは一人称の「私」で、ロレインは三人称で語られるのだが、それにもちゃんと理由がある。

予想外の展開でも読ませるが、サイコロジカルスリラーとしてもよくできていると思う。
物語には、「何が何でも子供が欲しい」女性が複数登場するのだが、その執念の恐ろしいことといったら。 精神疾患の域に入ると思うのだが、その異常で残虐さよりも、「なぜそこまで執着するのか」ということのほうが私には怖かった。

現実にもこの手の強迫観念に取り憑かれている人は大勢いるからだ。しかもその価値観は誰にでも当てはまるものだと思い込んでいる。

そうではない人間もいるのに・・・
あえて言わないけど。

 

 

Spenth@: 読書と旅行、食べることが好き。